祥文社印刷 P-MANによる見える化で管理の負担軽減、社員の意欲向上

祥文社印刷 P-MANによる見える化で管理の負担軽減、社員の意欲向上

 祥文社印刷株式会社(福岡市博多区、古賀達也代表取締役)は、2018年に自社開発のMISから株式会社ビジネスイーブレーンの『PRINT MANAGER』(P-MAN/総販売代理店:モトヤ)に切り替え、手書きの作業日報から脱却した。工程ごとの時間単価の見える化により、曖昧な部分があった原価管理を明確化。中小企業に最適なパッケージ型サービスのP-MANは社員の意欲向上を向上させ、同社の理念である“表現サービス”の具現化に寄与している。

自社開発のMISからの切り替えで

P-MANを選択

 1948年に創業した祥文社印刷株式会社は、福岡市で地域に根差した印刷会社として企画から取材、撮影、編集、組版、印刷、製本まで一貫してコーディネートする。福岡市に本社を持つ企業を中心に直需の仕事が9割以上を占める。

 設備はオフセット印刷設備として8色機1台、4色機1台、2色機1台、CTP1台、加工機として中綴じ機、無線綴じ機、折り機などを揃え、チラシ、パンフレットはもとより、企業の周年誌、博物館の展示図録など編集作業が関わる頁物印刷を得意としている。取引先は福岡市の小売メーカーや業界団体、教育機関まで地元の企業・団体を中心に展開。グループ会社のパン・パブリシティ株式会社ではWebサイトの制作・運営も手掛ける。

 経営理念には『印刷テクノロジーを核に、表現サービスの提供を通してお客様の満足追求と社会の幸福・発展に寄与する』を掲げ、顧客の情報発信をサポートしている。

 2003年に古賀社長が同社に入社するまでは、手書きの作業日報を元に経理システムに受注情報を入力する管理方法だった。過去の案件と比較する場合には、1枚1枚紙をめくって当該伝票を探す必要があった。古賀社長はそうした非効率性を改善するため自らが主導し、ファイルメーカーをベースにオリジナルのMISを開発。受注案件ごとに各工程にかかった時間単価から粗利を計算し、収益の可視化を実現した。

 一方で、複雑な計算式が必要となる原価計算は依然として手入力されていた。現場への作業指示書も手書き伝票が発行されるほか、ファイルメーカーのアップデートのたびにMISのメンテナンス作業が発生し、その都度、不要な負担がかかっていた。手書き伝票からの脱却や高効率の管理システムの導入を検討しつつも日々の業務に追われ、価格面でも中々踏み切れなかったところ、補助金サポート事業に取り組むモトヤからビジネスイーブレーンのP-MANが紹介された。中小企業にも導入しやすい価格で、実績もあることから、2018年に補助金を活用してP-MANを導入。本稼働に向けて準備を開始した。

受注情報の入力画面

導入から半年で本稼働へ

 MISの選定にあたっては、モトヤから各メーカーのMISの長所短所が説明されるとともに、祥文社印刷の業務に合わない機能などを客観的な視点で判断して情報が提供された。モトヤではP-MANを稼働する上で必要な業務の情報と、ヒアリングした祥文社印刷の要望をすり合わせスムーズな導入をサポートした。

 「P-MANの導入にあたり、全ての作業における価格テーブルとなるマスターデータの作成に大変苦労しました。自作MISで使用していた見積りの積算表があったので、土台はできていましたが、営業担当者が電卓を叩いて入力しているものだったので、曖昧な部分がありました。それではシステムが動かないのでつくり直す作業が必要でした」(古賀社長)

 受注案件や工程ごとにかかる時間、作業人数、部数といった情報を確認するために何度も打合せを重ね、オペレーターの作業から原価の精度を検証していった。とくに、時間単価の変動が少なく原価が計算しやすい印刷工程と違い、折り、丁合、綴じ、断裁という複数の工程が存在する製本のデータ算出に時間を要した。

 同社では自社開発のMISを導入する際に手書き伝票からのシステム化を経験した実績があるため、P-MANの導入にその分社員からの戸惑いは少なく、スムーズに運用へと移行できた。古賀社長が先頭を切って現場とコミュニケーションを取り、リーダーシップを執って推し進め、約半年間で本稼働へと漕ぎ着けた。

 「P-MANは、作業日報から原価を割り出します。見積りから作業指示書の発行、最終的な売上の計上、収益管理まで一連の数字の流れをわかりやすくした自作のMISと同じような考えの元につくられていると感じます。P-MANの導入で曖昧な情報伝達や入力ミスも減りました」(古賀社長)

見積りや交渉などの

営業活動の参考に

 古賀社長はP-MANが基本的にパッケージ型のソフトウェアであることを高く評価する。カスタマイズ型の場合、機能の設定が煩雑になり、業務効率化を目的にしたMISが、逆に手間のかかる作業を増やしかねない。

 「P-MANに含まれない機能については、社内の業務を見直してカバーしています。それがうまく導入ができたコツだと感じています。例えば、年に1回しか受注しない案件のような例外は敢えて手書きで処理するといった柔軟な対応が肝心です。95点や100点を目指すのではなく、実情を反映しながら80点の見える化を目指した方が効率的でしょう」(古賀社長)

 P-MANによる工程別の収益の見える化は、積算や価格交渉などの営業活動の参考になっている。社内の改善活動でも、「終わってみれば赤字だった」といった従来の感覚的な考えから、「色で苦労したことが原因で赤字になった」、「しっかりとしたデータで入稿してもらえたので黒字だった」と、具体的な事象から課題と成功理由が抽出でき、対策を講じられるようになった。

 また、部数の多い仕事や価格の見直しが必要な仕事、とくに直近では用紙代の値上げにより生じる原価の変化を見直せることが大きなメリットとなっている。

 「決算を待たずに実質原価から収益を判断できるため、その先の戦略、対策を立てるのに役立っています。例えば、定期発行物の受注はどこの印刷会社も受注したいため相見積もりがあり、価格的に厳しくなります。一見赤字のようでも、定期物は慣れが生じるため継続して受注することで効率が上がり、結果的に黒字となる場合があります。そうした情報が個々の仕事を継続するかどうかの判断基準となりますし、現場のモチベーション向上にもつながっています」(古賀社長)

数値的な根拠を元に

報奨金制度を実施

 同社では、作業ごとの時間単価が明確になったことを機に、12月から営業報奨金制度を開始。P-MANの情報によるしっかりとした数値的な根拠を元に、売上だけでなく作業の効率性から、顧客とうまく交渉できているかどうかを判断する仕組みとして運用していく。

 今後について古賀社長は、「紙媒体を中心に、お客様の想いを伝える技能を突き詰めていきたい。設備に頼るのではなく、地元のお客様と直接取り引きする中でお役に立てる道を考えていきます。そのためにも、現場の効率や営業の積極性を高め、社員一丸となって表現サービスを追求していきます。そうした体制づくりや社員の意欲向上の面でもP-MANが貢献する部分は多い」と展望し、着実に次の一手を模索する。

祥文社印刷株式会社 福岡市博多区博多駅南4-15-17

https://shobunsha.net/

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