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三菱ケミカル 市場拡大で3Dプリ ンティング用樹脂事業が本格始動

2021.1.14

三菱ケミカル社は、2018年、グループ内に分散していた3Dプリンティングに関する研究 機関や事業を三菱ケミカル社の高機能ポリマー部門に集約し、本格的な3D プリンティング 用樹脂事業参入に向けて、積極的な事業展開を行っていることを発表している。同時号については、欧米を中心に市場が安定的に拡大し、今後も成長が期待できる分野であることから、同社の中期経営計画「APTSIS 20」(2016-2020計画)において掲げている機能性樹脂事業の重点事項領域の一環として進められている。

三菱ケミカル_3D

 

3Dプリンターの原理は、1980 年代に考案され、90年代には自動車や家電製品の部品を 試作するために、製造業を中心に用いられていた。2000年代には、開発企業が有していた特許の有効期限が相次いで切れたことから3Dプリンティング事業に参入する企業が増加。それにより低価格化が進み、米国と欧州を中心に安定的に市場が拡大した 。

 

2020年、3Dプリンティング市 場は一気に拡大。要因として、世界的な新型コロナウイルス感染拡大と、これに伴う外出禁止令や外出自粛要請がある。

コロナ禍により企業のサプライチェーン、特に世界各国に工場を持つグローバル企業は深刻な影響を受けた。物流は滞り、自前で製作するにも図面から金型設計、試 作品 まで多くの工程を必要とする。このようにコロナ禍で必要供給量が不確かな中、図面さえ入手できれば、必要な場所で、必要なときに、必要な量をつくることができることから、3Dプリンティグはコロナ禍の窮地を救うシステムとなった。
医療物資を必要とした病院でも3Dプリンティングが活躍。工場と物流がストップした中、世界中の企業やエンジ ニアが医療物資に関連する設計図を無償でWeb上に公開し たことで、欧州では病院が3Dプリンターを購入し、現場でフェイスシールドや人工呼吸器の部品が製造された。日本国内においても、既存設備の3Dプリンター を活 用して医療物資をつくり、病院に寄贈する企業が相次いだ。
世界規模の外出制限が一段落した今も、「部品調達手段の多様 化」「生産コストの効率化・省力化」「DX化推進の一環」などをキー ワードに 市場の拡大 が続いている。

 

3Dプリンティング市場の拡大に伴い求められるのが、造形物に用いる素材である。特に、産業分野の部品生産に利用するためには 、強度や造形時間、加工のしやすさなど、造形に使用する素材も高い品質 が求められる。
三菱ケミカル社では、長年培ってきたプ ラスチックに関するノウハウをベースに、2018年、3Dプリンティング用樹脂事業に参入。翌年には、米国に工場を新設し、製品の量産を開始している。

 

3Dプリンターは、コンピューター上の立体データをもとに、専用の樹脂や金属などを一層ずつ重ねることで立体物を造形する技術で、数通りの方式が用いられている。
熱溶解積層(FDM)方式:高温で溶かした固形材料をノズルから吐出させて積層させる方式。家庭用3Dプリンターで一般的。
液槽光重合(SLA/DLP)方式: 液体の樹脂に紫外線を当てて固めて積層させる方式。3Dプリンターの中では、最も古い原理であり、業務用のハイエンド機から家庭用まで幅広いラインアップがある。
粉末 床 溶融 結合 P BF 方式:粉末にした樹脂などに熱をかけて固めて積層する方式。3Dプリンター工法の中では、造形スピードが速く、樹脂に色を付けることでカラー化も容易。

 

三菱ケミカル社の3Dプリン ティング用樹脂は、自動車の内装材、航空機部品、医療分野 などの幅広い試作用途に使用でき、各分野での展開が期待されている。 3Dプリンターの導入企業が得られるメリットは、金型製作が不要になることによる生産・物流 リードタイムの削減や環境負荷低減などが挙げられる。また、デザインの自由度も上がり、小ロット・複雑な造 形物への対応も可能となる。
今後、3Dプリンティング用樹脂の需要は、グローバルで年率10%程度伸びていくと見られており、同社においても市場の伸び以上の事業成長を実現すべく取り組んでいる。

三菱ケミカル_3D_成型見本

 

3Dプリンティングは、デザイン性の向上に寄与するだけでなく、使用材料の削減、製作・物流リードタイム短縮による CO 2 低減など、今の時代に不可欠な環境にやさしい工法といえる。
三菱ケミカルでは、3Dプリンティングへの樹脂ソリューションをグローバルに提供し続けることにより、社会・環境課題の解決の一助を担うとともに、三菱ケミカル ホールディングス が 掲げる「KAITEKI」の実現に向け取り組 んでいく。

 

三菱ケミカルの3Dプリンティング用樹脂事業に関する動き

■ 2018年3月  蘭・ダッチ・フィラメンツ社(Dutch Fila ments)、(現 MCPP ネザー ラン ズ社)の買収

→ これにより三菱ケミカル社 は 市場参入への足掛かりをつくると同時に、機能性樹脂事業のポートフォリオに新たに 3D プリン ティング 用樹脂事業 を 加 え た

■2019年9月 デンマーク・アディファブ社( Addi Fa b )へ 出資

→ 従来 不可能であった複雑な形状の部品設計や成型が難しいエンジニアリングプラスチックなども射出成型ができ、多種多様な特性、形状の部品が製造可能となった

■2019年10月 蘭・アトム 3D 社( Atum3D )と共同でダ イヤビームを開発

→ 「ダイヤビーム」はUV 硬化樹脂では難しかった耐熱性と耐衝撃性の両立を実現。かつ耐摩耗性にも優れ、複雑なデザインを付与で きる。

■2020年6月 独・ AMポリマーズ社( AM Polymers )と業務提携

→ 業務提供により、2社共同でポリプチレンテレフタレ ート(PBT)と呼ぶ高機能樹脂を用いた3Dプリンティング用パウダーを開発し、AM ポリマーズ社に供給。なお、三菱ケミカル社初の3Dプリンティング用粉末樹脂の製造・販売 。