【ビジネス】ニューブック1冊からのブックオンデマンド市場を開拓 POD出版サービス「BookStoreS.jp」設立

【ビジネス】ニューブック<br>1冊からのブックオンデマンド市場を開拓<br> POD出版サービス「BookStoreS.jp」設立

1965年に創業した株式会社ニューブックは「出版物流事業」をメインにEC事業者向けの「フルフィルメント事業」、「プリントオンデマンド事業」を展開し、1冊から本を届ける「BookStoreS.jp」サイトを立ち上げた。サイトは大手出版社で採用され、読者が欲しい時に欲しい本を届ける1冊から本を作るブックオンデマンド事業として展開し新たな市場を開拓している。

ブックオンデマンドビジネス

ほしい本を1冊から読者に届ける

ニューブックの豊川竜也社長は「プリントオンデマンド(POD)は受注生産という従来の生産スタイルを余剰在庫を持たず、1部から本を読者に届けるというビジネスが可能になりました。ビッグ4と言われる小学館、集英社、講談社、KADOKAWAなど大手出版社を中心に、この分野が着実に伸びています」とブックオンデマンド事業の現状を語る。

「1冊から本をつくる“ブックオンデマンド”は電子書籍の“紙版”と考えることで、ロングテールの先の市場がターゲットになりました。重版の無い書籍をオンデマンドで復刊したところ、アマゾンのランキングで総合5位になり、1,000部あるいは1,600部という単位で売れているという事例が登場しています。少部数のニーズはあっても重版はかけられなかった市場が、PODの仕組みにより動き始めています」と豊川社長。「ブックオンデマンドビジネスでは著者が講演会やセミナーなどで配本するために数百部の単位で購入するケースがあります。出版社は初版を300部程度に抑え、必要に応じて受注生産するスタイルに切り替えて赤字から黒字に転換しています。PDFデータの配信サービスをしていた企業では、本とデータで販売するように切り替えたことで紙媒体が高く売れてるようになっています。需要と供給に応じた販売方式により、健全な書籍ビジネスの構築が可能になっています。在庫を持つ従来型の出版流通よりも、売れた分だけを作るブックオンデマンドの価値が高まっています」と述べる。

出版物流会社だからこそ出来る

PODブックオンデマンド

出版物流会社の同社は「再版」「直販」「オンデマンド(POD)」「フルフィルメント」を事業とする。市場の変化を見据えてネット書店、1冊ずつ製本して届けるオンデマンドブックを10数年前から取り組んできた。

豊川社長は「出版業界のピーク時での1996年当時、弊社の売り上げは約10億円で、その大半が再版流通でした。しかし2018年の売上高は18億円です。再版流通の割合は3分の1になり、3分の2がネット経由のPODブックオンデマンド本の製作と物流です。出版物流は、常に在庫を抱え、市場が縮小すれば物流量が減ります。弊社は出版社や書店と同じ課題を抱える中で、読者や著者に目を向けた受注生産に活路を求めました」と述べる。

「出版市場はシュリンクしていますが、著者や読者は本当にいなくなったのでしょうか。市場の縮小は結果的に多種多様なコンテンツを失います。出版社は返本率を減らすためにタイトル数を減らし、チャレンジングなタイトルも少なくなる魅力のない市場になっているのではないでしょうか。ニューブックが出来ることは何かを考え、著者にフォーカスしたサービスをしようと始めたのが『BookStoreS.jp』です。2012年の国際ブックフェアでKADOKAWAが『これからはセルフパブリッシャーの時代』と表現しました。“いよいよオンデマンドの時代がくるかもしれない”と思い、本格的にサービスに乗り出しました」としてブックオンデマンド事業をスタートさせた。

1冊からの製本に対応するホリゾンの無線綴じ機
1冊からの製本に対応するホリゾンの無線綴じ機

セルフパブリッシャーのインフラとして2016年12月に「BookStoreS.jp」サイトをリリースした。在庫は持たず、誰でも簡単に、自分だけのPOD書店を開設でき、1冊からネット書店で販売が出来るサービスは著者、出版社、ブックストア(簡易サイト)の三者で構成する。この仕組みは読者が読むために本を購入をするだけでなく、著者や書店も本を購入出来ることが特徴だった。

集められたデータは「Sekb(セルン)」の名称でコンテンツデータとして管理し、必要に応じて許諾するサービスが利用できる仕組みを作った。「出版流通の値引きをしない仕組みを作りたいという思いから始まりました。需要と供給の関係から1冊あたりの単価は高くてもよい。高品質と安定供給により市場を創る」ことがニューブックが目指したものだった。

Book of Oneの利益は物流から

Iridesse™ Production Press
Iridesse™ Production Press

ニューブックは、本社の所沢ロジスティクスセンターに印刷システムとして富士ゼロックスの「Iridesse™ Production Press」や「Versant™ 3100 Press」、キヤノンの「imagePRESS C800」を設置し、後加工ではホリゾンの自動無線綴じ機「BQ-480」、ホリゾン折機、江東錦精社の表紙自動PP加工機を設置。100部未満の“Book of One”のニーズに応えている。中綴じ機ではPURやEVAの糊を自動で供給する仕組みを作り効率的な生産ラインを構築。小口梱包と発送システムという同社の強みを追及した。「Book of One市場では配送事業が鍵を握ります。当社は個人への配送がブックオンデマンド以外でも年間800万を超えます。最終的に物を届ける物流会社との仕組みを最適化し、配送網の構築を実現しています」と同社の強みを述べる。

ブックオンデマンドビジネスの

成長に向けて

豊川社長は「世界のコンテンツ市場は2017年は64兆円、2024年には81兆円になると言われています。日本のシェアは2017年が4.4%です。『ドラえもん』をはじめ日本のコンテンツは世界で楽しまれています。コンテンツが流通する仕組みを作れば欲しい本がいつでも買える環境を整えることが出来ます。大量の配本を守ることは読者の創出にも繋がります。印刷・製本会社においても少部数向けのインフラを整え、物流会社とパートナーシップを結び、コストを抑えた配本が可能になります。スマートファクトリー化を目指し、需要と供給に応じた生産ラインを考えることで、市場が縮小しても、安定し本を提供出来る仕組みを作っていきたい」と今後の展開を語っている。

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