プライズコミュニケーション アグフア・ANAPURNAで生産力、競争力を高める

プライズコミュニケーション アグフア・ANAPURNAで生産力、競争力を高める
小野綾子社長
小野綾子社長

株式会社プライズコミュニケーション(東京都江東区/小野綾子社長)は強化ボードを活用した独自商品ブランド「スパダン」事業を強化する。「スパダン」は軽くて強度の高い紙製のボードに、UVインクジェットプリンタで装飾して加工したオリジナル商品。事業強化に当たっては、今年1月、アグフアのワイドフォーマットUVインクジェットプリンタを更新して「:ANAPURNA(アナプルナ) M2050i」を導入するともにカッティングプロッタを増設して生産力を上げた。

ワイドフォーマット事業が花開く

2009年12月、同社は新規事業の構築に向けてアグフアのワイドフォーマットUVインクジェットプリンタ「:ANAPURNAMv」を導入。得意分野のセールスプロモーション関連の印刷に加え、POPやディスプレイ、什器など立体物の製造に乗り出した。当初、製造、販売のノウハウはゼロであったが、それでも新しい分野に挑戦させたのは、小野綾子社長の危機感からだった。

導入した:ANAPURNA M2050i
導入した:ANAPURNA M2050i

「人口減少やインターネットの普及で、将来的な印刷需要の減少が視野に入ってきたころです。印刷事業の延長線上から新しい業態を目指そうと、情報を得ると捨てられてしまう印刷物ではなく、モノとして使ってもらえる印刷物を作ろうと思いました」
しかし新しい事業のプランにはリーダークラスをはじめ、ほとんどの社員が反対。それでも3人の社員が手を上げたことで、ワイドフォーマットの事業が始まった。
立体物を作成するには展開図の知識が必須だが、CADを触ったことのある社員はいたものの、3人とも素人同然からのスタートだった。独自に勉強して試行錯誤しながらサンプルを作成し、社内に展示室を設けて制作物が具体的に見えてくると、営業担当者の意識が変わってきた。
「企画力のある印刷会社に仕事が流れる傾向が強くなり、営業担当者も提案力が問われるようになりました。自分たちのアイデアが形になり、お客様の役に立てれば社員にとっても高いモチベーションが維持できます。ワイドフォーマット事業は商業印刷においても提案力を高めるツールとなっていきました」
導入から5年、ディスプレイ関連の事業は軌道に乗った。もっとも小野社長自身も新しい事業の具体的な勝算が見えていたわけではなかった。「幾ら材料費を使ったか判りません。でも、いつかは結果を出してくれるだろうと」と忍耐強く、社員たちの新しい挑戦を見守った結果、投資が実を結んでいった。

ペット市場向け独自商品を開発

2
スパダンで製作した「わんクロ」

ディスプレイ製品から始まったワイドフォーマット事業のさらなる飛躍に向けて小野社長が打った戦略が、一般消費者に向けた独自商品の開発・販売による「企業ブランド力」の向上である。
商品の開発に当たっては、印刷の延長線上にあること、競争が激しくないこと、消費者心理が理解できることをポイントとした。
「まず、女性向けのペット関連の商品に的を絞りました。私は犬を飼っていて、飼い主と女性の気持ちが判ります。開発の際にはペットビジネスの中でも市場になかった商品を生み出すことを考えました」
最初に開発したのが強化段ボールを使った犬用のクローゼット。木製の製品は販売されていたが、軽くて丈夫な紙製の製品は市場になかった。しかもUVインクジェットの強みを活かして様々なデザインも可能だ。この新しい事業には4人の社員が関わり、3つのタイプの商品を生み出した。
2014年4月、新しい商品の手応えを得ようと、同社は東京・代々木公園で開催された「代々木公園 ワンワンカーニバル」に新ブランド「スパダン工房」の名称で出展。約800人にアンケートを実施した結果、3タイプとも甲乙つけがたく、3つのクローゼットを商品化することを決定した。同年7月には東京ビッグサイトのインターペットへの出展を機に販売を開始。様々なメディアにも取り上げられ、流通関係者の目にとまった。
現在は22のペットショップ、ショッピングモールを展開する大手流通業、Yahoo!ショップ、楽天市場などで販売されおり、有名テーマパークのキャラクター商品も扱うようになった。クローゼットにとどまらずハンガーやペットハウスなど商品アイテム数も拡大している。

事業拡大へANAPURNAを更新

現在は完全受注生産。毎日、売れてはいるが、「スパダン工房」自体が単独で事業を成り立たせていくまでの受注量には至っていない。このため、2016年からは一般企業やバイヤーなどを対象に、まとまったロットで強化ダンボールを活用した商品を販売し、B to Bの販路を開拓。第一弾が化粧品分野で、1月に開催された国際化粧品展に出展し、反響を得た。
「スパダン工房」でB to Bのビジネスを拡大するためのポイントは生産性とコスト。事業拡大に向けて、従来機の4倍の生産性となる毎時101㎡出力の「:ANA PURNA M2050i」を導入した。印刷幅は最大で205㎝と、メディアサイズも拡大している。
「B to Bへと市場を拡げ、猫やオフィス、キッズ等の市場に水平展開を図るためには生産コストを下げる必要がありました。このため、プリンタの速度を上げて時間当たりの原価を下げました。今までは納期面で受注できなかったこともあったのですが、生産性が上がったことで、取りこぼしがなくならないようにしたい」。また、「アナプルナの品質はお客様から評価を頂いていました。色が変わってしまっては商品にはなりえませんし、それでお客様が離れてしまっては今まで築いてきた信頼が失われてしまいます」と、品質を維持するためにも同系列のマシンを選択。加えて、ホワイトインクの搭載により、業務の幅が広がることも機種選定の大きな理由となった。

2016年1月、同社は“優れた製品(部品含む)・技術により革新的に事業展開の道を切り開いている企業”を認定する「江東ブランド」に選ばれた。大手流通業者が商品を取扱ったり、キャラクター商品にも取り入れたりすることで、「スパダン工房」の認知度が上がれば、「プライズコミュニケーション」としてのブランドにも良い影響が及ぶ。言葉で説明するよりも優れた商品には説得力がある。小野社長はその力によって商品力の拡大に加え、“本業”の印刷需要に相乗効果が表れることを期待する。
小野社長は変革が日々、新しい経験を重ねた先にあると見ている。確実に段階を踏みながら前に進んでいくと、ある時、変わっていたと気づく。「黙っていてイノベーションは起こせません」。チャレンジする社風があればこそ社員が前を向いていける。新しい事業と新しい設備で、そうした企業体質をさらに強化していく。

株式会社プライズコミュニケーション
TEL03-3685-2700
http://www.prise-com.co.jp/

関連記事