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プリテックステージ新春座談会
これからの印刷ビジネスの可能性を語る(3)

2017.1.5

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2016年、産業界では、“第四次産業革命”や“インダストリー4.0”という言葉が話題となり、マスカスタマイゼーション(個別品の大量生産)を可能にするスマートファクトリーに注目が集まった。自動化とそれに向けた標準化は、印刷産業で長く課題とされてきたが、マーケティング手法のマスから個への変化に伴い、可変コンテンツの制作やそれを受けるメディア生産の効率化は避けて通れなくなるかもしれない。2017年を迎えるにあたり、『月刊プリテックステージ』では生産現場の自動化の必要性と、新たな市場を拓くためのビジネスの視点について、ハイデルベルグ・ジャパン株式会社の土屋弘太郎氏と、株式会社モリサワの山﨑雅秀氏、酒井大倫氏を招き、新春の特別座談会を企画した。モデレータ―は公益社団法人日本印刷技術協会の郡司秀明氏に務めて頂いた。

p7-1_左からモリサワの山﨑雅秀氏と酒井大倫氏、ハイデルベルグ・ジャパンの土屋弘太郎氏、JAGATの郡司秀明氏

左からモリサワの山﨑雅秀氏と酒井大倫氏、ハイデルベルグ・ジャパンの土屋弘太郎氏、JAGATの郡司秀明氏

 

 

 

 

 

 

 

BPOビジネスへの視点

 

郡司  ジョイントベンチャーという方法もありますが、1人くらいはマーケッターのような人材が必要です。印刷業において、マーケティングの考え方とBPOは要になるのではないかと思っています。BPOでサービスがスピーディーになり、印刷業は顧客企業から感謝され、この仕事はずっと続くものになります。顧客企業にとってもコストダウンや業務負担に繋がります。単に印刷の売上だけという時代ではなくなってきています。

酒井  BPOの現場で顧客企業と印刷会社を繋げるものに、Web to Printの仕組みが主流になってくるのではないでしょうか。カタログの中の訪問顧客に必要な商品だけを営業マンが通販サイトから選択してチラシやカタログにまとめるといったニーズがあります。そこではレイアウトを自動化し、色々なシステムに繋いでいく。こうした業務を運用も含めてトータルにサポートされている印刷会社があります。

BPOのような業務は、総合サービスのような仕事が特長です。全体の予算の中でトータルなサービスで提案していく。そのためにも、印刷会社は、お客様が何を求めているか、全体を俯瞰して見る目が必要ではないでしょうか。

郡司  マーケティングと結びつくことで、印刷業はきちんとした産業になれるのではないかと思っています。今は単純な受注産業にあり、競合になると値下げ競争が始まります。これは、きちんとサービスを説明できる営業マンが少ないのではないでしょうか。今後、紙メディアがどういうところで使われるのかを考える人が出てくると変わってくるのではないでしょうか。

土屋  日本の製造業の傾向は、自らチャレンジして新しい価値をつくることに踏み込める人は少なく、成功事例を真似する傾向が多いと感じます。印刷業も、パッケージ向けのデジタル機を見て、「一体何をつくるの?」という話になります。でもそのアプローチでは価値は生まれません。「この機械なら、こんな提案できるから、こうしたら面白いかな」と考えられることが必要です。こうしたマーケティング視点の人が登場してくると、印刷業は面白くなると思います。

一方で印刷産業のパートナーであるエンドユーザー側や印刷クライアントの企業に、アピールしたほうが早いのではないかとも思います。その動きの中で、印刷会社さんにも加わってもらうということもあるのではないでしょうか。

郡司  これから伸びる印刷物について伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。

山﨑  印刷は、すでに印刷産業だけのものではなく多くの人にとって身近になっています。ですから、どの分野ということではなく、印刷の価値を見直して頂き、顧客企業のビジネスをサポートし、アドバイザーとなれるような立場を目指されることに期待しています。

なぜなら、例えば、震災時の避難警告などは文字に赤フチをつけて表示することで注意喚起します。これは、映像だけ、動画だけでは伝わらないことを、文字を使って伝えています。インパクトや表現力を与えることができるのがデザインやレイアウトです。情報にこのような価値を与え、しっかりと伝える方法を一番理解し、上手く活用できるのが印刷会社の皆さまだと思うからです。

山﨑  モリサワでは、今後、クラウドに対応したレイアウトエンジン「LayoutSquare(レイアウトスクエア)」を提供していきたいと考えています。それが、将来的にAIの力を借りて、年齢や海外の方など、言語分析、年齢分析によって吐き出すアウトプットを変えることができるようになる。そうして、おもてなしやインバウンド対策、カスタマイズオリジナリティに繋がっていけるかなと思います。文字を扱い、情報を提供する。情報コミュニケーションのなかで全ての人に最適なコンテンツが提供される社会になることを願っています。

郡司  印刷関連メーカーにとっても、これからの商売敵は同業ではなく、スマホ等になってきます。例えば、テレビの世界も、これからは4Kテレビの時代になります。そうなると、濃度レンジが従来の100倍、つまり100倍明るいテレビが登場してきます。その時、果たして“まぶしい写真”がとれるのかということが問われます。時代が変わり、技術が変わると表現も変わります。その時、印刷はどうするのか。気を付けるべきポイントも変わってくるのではないかと思います。

ただし、“印刷”はインターネットと結びついてこそ価値が生まれます。マーケティングツールズの一つであると割り切って、どのように活かすかを考えて、印刷物以外のビジネスも獲ると考えた方がいいのかなという気がします。

山﨑  情報を伝えたい人から受け取りたい人への繋ぎ役をするのが印刷業であり、その形は色々変わるということですね。

 

パーソナライズ化への取り組みに期待

 

酒井  情報加工産業という視点では、マーケティング視点、ユーザー目線で色々な提案ができる、マーケティングコーディネーターのような人材が必要不可欠です。この内容は、Webで告知した方が訴求できるとか、この層は印刷物でといった、コーディネートできる人材です。一方、それを取り巻く技術を扱える人材も印刷業には必要となってきます。伝わるコミュニケーションの手段は時代によって変わるので、その時々で最も適した表現、メディアを選ぶことができれば、印刷業は価値を発揮できるのではないでしょうか。

郡司  その時、自社のシナリオだけではなく、お客様のシナリオも考えることが、印刷会社に必要かなと思います。

酒井  さらに、バリアブルやパーソナライズは、確実にマーケティングの手法として確立していくと思いますので、どんどんアピールしていきたいと考えています。

土屋  印刷物には色々なジャンルのものがあります。その中で、新聞はなくなるかもしれませんし、飲食店のメニューもタブレットに置き換わるかもしれません。ただ、紙を無くしていこうという取り組みから、紙へ回顧するステージに入り始めていると思っています。しかし、一度なくなった紙のマーケットについての価値をどう再定義するのかということがあると思います。

今まで同じものを刷っていたけれど、1つずつ変えても早く刷れるという技術や、印刷業界ができることをしっかりクライアントに解ってもらう。その上で、今の技術とコンピュータの仕組みをリンクさせて、いかにお客様に届けるかを、印刷物を刷るためだけではなく、印刷物のあり方を話し合う。そこから使い方が生まれてくるのではないでしょうか。パーソナライズの可能性は、自分だけのものを作りたいというニーズであり、可能性がありますが、まだ成熟していないと思います。パーソナライズへの対応は、全てがコンピュータになってしまった時代こそ紙の可能性があるだろうと思っています。難しいのは、既存の技術を今のニーズに併せていくということです。特に、後加工の再編が課題になるのではないでしょうか。

酒井  バリアブルにおいて、最後の課題は検査です。研究開発が進むAIなどを活用した仕組みが出てくると良いと思います。1文字単位の間違い、特に人名が検査できる技術が欲しいですね。バリアブルデータの比較検査には強力な演算能力が必要となりますが、クラウドになれば、パワー的にも使える時代がそこまで来ているのかと思います。

土屋  ワークフローの視点でいうと、究極はクラウド化であり、クラウドで必要な時に必要なリソースを使う時代がくると個人的には思っています。自動化への流れは以前からありましたが、サーバが必要でした。クラウドの時代であれば、その設備投資が不要になるので、増えていくと思います。

酒井  前工程のデザイン制作の部分ではツールが様々にあるので、完全データの受け渡しにもクラウドを利用するなど、どこにいても仕事ができるようになってきました。モリサワの「LayoutSquare」を使って、一般企業の営業マンが印刷物を簡単に作る時代がきて、印刷会社はその運用費を頂くということになれば、印刷業の立ち位置やビジネスも変わると思っています。

郡司  印刷業に対するメッセージを伺います。

酒井  繰り返しになりますが、印刷の価値を高めるためにマーケティングのスキルを磨いて、コーディネーターを育成する必要があると思います。もしくは、そのような人材を招き入れることで印刷業界が変わっていく、弊社でもそんなお手伝いができればと願っています。

山﨑  文字があることで正確に情報が伝わり、レイアウトを使うことで表現力やインパクトが増し、クラウドによってレスポンスの早さが得られるということがあります。それぞれの技術を組み合わせていき、情報コミュニケーションを支える一翼を担い続けることを願っています。モリサワも培ってきた技術を一つのモジュールとして色々なシステムに組み込んでもらうことを考えています。pageでも、その一つとして「LayoutSquare」を紹介しますが、今後は様々な業界に対しても訴求していきたいと思います。

 

時代の変化に応じて、必要な印刷物も変わる

 

土屋  印刷会社さん自身が、目の前のクライアントとその先にあるビジネスの中でどう紙が使われるかをシンプルに見直して、その中でどう紙を使うかを考えるところからスタートしていくことが肝心だと思います。デジタルが使えるようになることで、提案できる内容も増え、仕事を受けるための自動化へ、という流れが生れると思います。小さい会社だから自動化は関係ないのではなく、必要性がどこにあり、どこに繋がるのかを、自社の仕事や顧客企業、その先のエンドユーザーまで考えて頂きたいと思います。その時、落とし込む仕組みとして、ハイデルベルグのワークフローを含めた自動化を考えて頂き、それによって人の配置を変えるというようにプラスの方向に考える企業様が増えればいいかと思います。

郡司  自動化により、どのようにでもフローが組めるということから、最低限、自動化は必要だと思います。そして、各会社にとってのクライアント、ブランドオーナーなどが困っていることを解決するために、まずを相談できる企業であることです。困っていることを聞ける営業マン育成に繋がることができたらいいかなと思います。

page2017では、ブランドオーナーに向けて印刷物の活用を訴求するにセミナーを開催したいと考えています。印刷クライアントが印刷会社に相談してもらう状況を作っていためにも、ブランドオーナーにPRしていくことが印刷に関係するメーカーやJAGATのような団体の務めだと思います。