印刷業界ニュース ニュープリネット

プリテックステージ新春座談会
これからの印刷ビジネスの可能性を語る(2)

2017.1.4

%e5%87%ba%e5%b8%ad%e8%80%85

 

 

 

 

 

 

 

2016年、産業界では、“第四次産業革命”や“インダストリー4.0”という言葉が話題となり、マスカスタマイゼーション(個別品の大量生産)を可能にするスマートファクトリーに注目が集まった。自動化とそれに向けた標準化は、印刷産業で長く課題とされてきたが、マーケティング手法のマスから個への変化に伴い、可変コンテンツの制作やそれを受けるメディア生産の効率化は避けて通れなくなるかもしれない。2017年を迎えるにあたり、『月刊プリテックステージ』では生産現場の自動化の必要性と、新たな市場を拓くためのビジネスの視点について、ハイデルベルグ・ジャパン株式会社の土屋弘太郎氏と、株式会社モリサワの山﨑雅秀氏、酒井大倫氏を招き、新春の特別座談会を企画した。モデレータ―は公益社団法人日本印刷技術協会の郡司秀明氏に務めて頂いた。

p7-1_左からモリサワの山﨑雅秀氏と酒井大倫氏、ハイデルベルグ・ジャパンの土屋弘太郎氏、JAGATの郡司秀明氏

左からモリサワの山﨑雅秀氏と酒井大倫氏、ハイデルベルグ・ジャパンの土屋弘太郎氏、JAGATの郡司秀明氏

 

 

 

 

 

 

 

 

紙メディアへの回帰が始まっている

 

郡司  インダストリー4.0やプリント4.0という話題がありますが、アナログ印刷とデジタル印刷は、どのよう動いていくでしょうか。

山﨑  「文字」は、一般企業よりも、印刷業やデザイン業にこそ価値が見出せると思っています。特に今後は、レイアウトなどの価値の訴求をしていく必要があるだろうと考えます。アウトプットのデバイスにはデジタルも紙もあります。それは、情報を表現する選択肢が増えたというだけのことであって、モノに依存するのではなく、伝える価値の重要さを知っていただきたいと思っています。

郡司  伝える価値ということですが、例えば印刷物の中でも「チラシ」には集客力があり、確実に効果が得られる明確に価値ある媒体です。しかし、新聞購読者数が減少し、チラシが手元に届かなくなりました。一方で、チラシのファンは確実にいて、スーパーの店頭に置かれたチラシの需要があったりします。

酒井  チラシは残るべきメディアだと思います。効果測定ができなかったのでマーケティング視点での分析ができなかったということが価格勝負になってしまった要因だと思います。効果測定ができ、一つのメディアとしての提案を印刷会社や広告制作会社ができれば、まだまだ利用価値があると思います。また手元に届ける仕組みも重要です。

土屋  最近、IT関連の業界などからは紙への回顧の話を聞いたりします。2000年頃からITマーケティングにフォーカスして、紙メディアが切り捨てられていきましたが、ITマーケティングが絶対に届かない層が見えてきたと言います。一つは高齢者層で、スマホを持ち始めていますがデジタル媒体の広告から商品を購入しません。10代などの若い世代もデジタルデバイスを意外と使わないということです。こうした層には、紙メディアのほうが効果があり、紙に回顧する部分と、デジタルを使う部分、あるいは両方を融合する動きがあります。プレミアムチャネルとしての紙の再定義が出てきているようです。やはりそこでも最後に残る課題が、届ける仕組みだそうです。

山﨑  今はメールなども氾濫しすぎていて必ずしも読まれません。一方でチラシとDMの違いは、DMは宛名があるということが強みではないでしょうか。宛名が入るだけ確実にアプローチができると思います。その後、関心を持ってもらうためにはコンテンツの工夫が必要になると思います。

郡司  アメリカのDMなどはパーソナルカタログになっており(50頁を超えるものもある)、内容はターゲットを反映しているので価値があります。日本の印刷物が捨てられるのは、価値が見出されないからではないでしょうか。そういう情報発信を目指すことが印刷業にとって必要だと思います。

また印刷関連メーカー企業の方々には、そうした旗振り役をして頂きたいと思っています。そして、お客様が欲しい情報を届ける。そこで活用できるのがマーケティングオートメーション(MA)だと思います。実際、アメリカでは、ITの権化のような企業が、一番紙を使って訴求しています。

マーケティングの世界に、リードジェネレーション(メディアを利用して消費者を注意喚起する)とリードナーチャリング(見込み客をメディアを使って啓蒙・育成する)という考え方があります。顧客を育てるにあたり、紙媒体は大きな効果があると思います。

そのかわり、よりターゲットを明確にして、お金をかけて訴求するのが印刷の得意なことだと思います。ただし、かなりターゲットを選別すると、ロットが少なくなってしまうので、利益のでるシステムを考える必要があるかもしれません。

土屋  マーケティングにおいてお客様の購買意欲にはステージがあり、ステージ毎にマーケティング手法の違いがあると思います。一番、購買意欲の高い人にはプレミアムカスタマーとして扱い、高級な印刷物で勧めます。しかし、その下の広い予備軍の層には、少しコストを落としても、沢山情報を盛って制作する。この時、ある程度のロットで制作して、店頭でも配布することを考えてもいい。紙の最適な利用方法について、もう一度原点に返ると、小ロットに限らず色々な使い方があると思います。

デジタル印刷機の登場は、小ロット印刷ができるようになったという、アナログ時代のロット数の壁をなくし、紙の使い方が柔軟になったという点が重要だと思います。他の媒体との違いを再定義していくと、印刷物の使われ方が見直されるのではないかと思っています。

山﨑  DMであれば、MAなどで啓発・育成することでターゲットが絞られてくるのでターゲットごとに内容を変えていく。チラシを制作される方々は新聞の配布枚数が減ったことを嘆くのではなく、人気のショップなどは開店前に必ずチラシを配布するなど、チラシを見ていただくタイミングとシーンを考えることで新しい使われ方の発想が生まれると思います。

酒井  お店に来られるお客様が、どの様なシーンでチラシを見られるか、ストーリーをイメージしながら、どの様に配布すれば良いのかを工夫していけば、良い方向が見えてくるのではないかと思います。

郡司  ハイデルベルグさんは、パッケージ対応のシステムを発表しましたが。この市場の可能性についていかがでしょうか。

土屋  物を包んで最終製品としてお届けするマーケットは、物があるだけ必要とされるという意味で基盤が強い市場です。それに対して、カスタマイズやバージョニングすることで、購買意欲をあおるという意味で、まだまだこれからだと考えています。

酒井  外函が地域特性などを反映したバージョニングされたデザインになり、さらに加工もレーザーカッターなどを活用して個々に違った形でカットできれば、色々な試作ができますから、そう考えると楽しみです。パーソナライズ、バリアブルは、いずれ印刷物には欠かすことができない技術の一つになってくるのではないでしょうか。モリサワでは、2005年にバリアブルソフトを発表して10年以上経過しましたが、やっとこのような時代がきたと感じています。

さらに印刷会社さんには、広告やデザインの素養も必要ですが、マーケティング視点で、商品の拡販を考える方を雇ったり、広告会社とジョイントベンチャーといった手法で協業できればいいかもしれません。

 

これからの印刷ビジネスの可能性を語る(3)に続く