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プリテックステージ新春座談会
これからの印刷ビジネスの可能性を語る(1)

2017.1.3

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2016年、産業界では、“第四次産業革命”や“インダストリー4.0”という言葉が話題となり、マスカスタマイゼーション(個別品の大量生産)を可能にするスマートファクトリーに注目が集まった。自動化とそれに向けた標準化は、印刷産業で長く課題とされてきたが、マーケティング手法のマスから個への変化に伴い、可変コンテンツの制作やそれを受けるメディア生産の効率化は避けて通れなくなるかもしれない。2017年を迎えるにあたり、『月刊プリテックステージ』では生産現場の自動化の必要性と、新たな市場を拓くためのビジネスの視点について、ハイデルベルグ・ジャパン株式会社の土屋弘太郎氏と、株式会社モリサワの山﨑雅秀氏、酒井大倫氏を招き、新春の特別座談会を企画した。モデレータ―は公益社団法人日本印刷技術協会の郡司秀明氏に務めて頂いた。

p7-1_左からモリサワの山﨑雅秀氏と酒井大倫氏、ハイデルベルグ・ジャパンの土屋弘太郎氏、JAGATの郡司秀明氏

左からモリサワの山﨑雅秀氏と酒井大倫氏、ハイデルベルグ・ジャパンの土屋弘太郎氏、JAGATの郡司秀明氏

 

 

 

 

 

 

 

2016年のトピックの振り返りから

 

郡司  2017年は、JAGATは50周年を迎えると共に、page展も30周年という節目の年になります。印刷業は、これまで「スピード」「品質」「コスト」を追求してきましたが、印刷物がマーケティングツールであるならば、売れることに役に立つ“印刷”を考えないといけないと思います。その意味でも、印刷の価値観が大きく変わる節目を迎えていると思います。

まず、技術視点の振り返りとして、2016年はdrupaの年でもあり、drupa2016で「プリント4.0」を掲げたハイデルベルグさんからお聞きしたいと思います。

土屋  「インダストリー4.0」は、製造業を中心としているドイツが、産業をより効率化するための自動化・デジタル化の推進を国策として進め、一つの目標として「スマート工場」つまり自ら考えて動く工場の創生を掲げています。一方、ハイデルベルグでは、オフセット印刷技術を中心にビジネスを展開してきた経過の中で、ライノタイプヘルのワークフロー技術を取り入れた一元化や自動化、最適化を提案してきました。究極の生産体制の構築は、ソフトウエアも含めることで成熟性を高めていくということだったと思います。

drupa2016でハイデルベルグが象徴的に掲げたのが「シンプリースマート」でした。その一つの象徴が「Push to Stop」、つまり印刷の全自動運転であり、自ら動く印刷の実現です。印刷工程における自動化とは、コンピュータ技術やワークフロー技術を取り込みながら、いかに人を介さずに印刷できるかの追求です。製造業として目指すのは、フル自動化運転です。トラブルが起きたりした時だけ、人がオペレーションする、そういった生産工場を目指していると思います。

個人的にも、ハイデルベルグが掲げた内容には大きな意味があると思っています。アウトプットするデバイスの選択肢が増え、バラバラに流れている情報を統合していく。そのために、フロント側の仕組みとしてワンワークフローで対応できるようにするためにコンピュータを統合し、マルチデバイスに対応したコントロールへと突き詰めるならば、最適化、自動化を進めませんかという意思表示だと思っています。

郡司  ハイデルベルグのブースにおいて、富士フイルムとコラボレーションしたデジタル印刷機「Primefire(プライムファイア) 106」などの出展は、歴史的変わり目を感じた製品でした。

土屋  プライムファイアについては、個人的にも、ハイデルベルグにおける変化を感じます。オフセット印刷機でのロングランや大量印刷だけでは印刷ビジネスは厳しい局面にあります。そこで、デジタル印刷にフォーカスし始めたのが2011年でした。経済環境の落ち込みが印刷業にも影響した頃から、デジタル印刷を取り入れた営業的価値の創出へという流れが一気に出てきました。しかし、小ロットを効率的に行い、パーソナライズ化するなどのビジネスの価値への転換は未熟で、課題として残っています。

全てとは言いませんが、デジタル印刷機の生産性が上がれば、オフセット印刷機からデジタル印刷機に替われる部分も出てくると思います。その時、求められるのは生産性や安定した品質に加え、デジタル特有のエラーを解消し、エラーのない最終製品をいかに出すかです。プライムファイアは100%の生産性を追求したものであり、そこに“ハイデルらしさ”が反映されていたと思います。

郡司  一方モリサワさんはフォントのメーカーではありますが、ソリューションも提案する会社になりつつあると思います。今のマスカスタマイズや自動化の動きについていかがでしょうか。

酒井  製造工程において、自動化できるところは自動化し、よりクリエイティブな部分を人が頭を使えばいいということだと思います。drupa2016の会場では、工場での自動化システムやロボット技術が出展されていました。今後印刷工場や前工程のマーケティング分野においても自動化技術が導入されていくであろう未来を感じました。

郡司  製造現場を無人化してコスト競争に立ち向かうのは最もですが、効率化による価格の問題があると思います。

山﨑  刷ることだけの競争ではなく、トータルで見ることが必要だと思います。前工程から、時には在庫管理まで。そして、発注量の推移を分析・管理し、その効果を計ることが重要です。それは、クライアント企業と情報を共有し、利潤を追求する上で共創の場を持つことであり、印刷の価格を下げないことに繋がると思います。

 

これからの印刷ビジネスの可能性を語る(2)に続く