日経印刷&紀伊國屋書店と書物復権10社 『本づくりのウラガワ』で見学会&セミナー

開会あいさつする吉村社長
開会あいさつする吉村社長

日経印刷は、紀伊国屋書店および〈書物復権〉10社の会と共催で、6月17日、『「本づくりのウラガワ」~本はどのように作られ、そして読者に届くのか~』をテーマにしたイベントを、日経印刷グラフィックガーデン(東京都板橋区)で行った。

同イベントは、大学生・図書館関係者を対象としたもので、1冊の本を世に送り出すための一連の工程を見学会とセミナーで紹介。普段なかなか表立つことのない出版業界のウラガワを垣間見る機会として行われた。

会場となった日経印刷のグラフィックガーデン
会場となった日経印刷のグラフィックガーデン

当日は、7~8校の大学から約70名が参加。日経印刷の吉村社長による「本づくりの現場を堪能してもらいたい」との開会の挨拶に続き、4グループにわかれて工場見学からスタートした。

グラフィックガーデンは、4階(企画・デザイン)、3階(印刷)、2階(製本)、1階(発送)へと、編集工程から印刷・製本・発送までワークフローに順応したフロア構成となっており、仕訳発送まで行える922パレット収容可能な自動ラック倉庫の併設など、様々な視点から作業の効率化を図っている。見学会では、編集から発送までの一貫した本づくりの現場が紹介された。

〈書物復権〉10社を代表してあいさつしたみすず書房の持谷社長
〈書物復権〉10社を代表してあいさつしたみすず書房の持谷社長

工場見学の後は、「本づくりのウラガワ~出版の現場から~」をテーマにしたセミナーが行われた。セミナーの司会を白水社の営業部・宣伝部の小山英俊氏が務め、パネラーには東京大学出版会・編集局長兼第3編集部長の小松美加氏と、白水社・編集部部長代理(語学書部門)の菅家千珠氏を招いて行った。

なおセミナーの冒頭には、みすず書房の持谷寿夫から挨拶があり「これぞ出版の現場だということ聞いて頂きたい」とセミナーの紹介があった後、〈書物復権〉10社についても解説した。〈書物復権〉10社は、専門系の出版物の発行を強みとしている出版社の集まりであり、1社では難しい復刊に取り組む”共同復刊”を行っている。この共同復刊では、すでに約900点を超える品切れ書籍の復刊を実現している。

司会を務めた白水社の小山氏
司会を務めた白水社の小山氏

セミナーでは、語学書や学術書の制作に携わる立場から、出版に至る編集作業の苦労談や著者との関わり方など、一般には語られない本づくりの”ウラガワ”について語られた。特に最近は出版する側である大学自体が、コストへの対応と教科書本としての必要性から、出版社部門を設立するなど自前で出版する動きがあることや、一つの語学書でも切り口や編集方法によって無限の制作ニーズがあるなど、現在の出版ニーズや可能性についての意見も紹介された。

パネラーとなった東京大学出版会の小松さん(左)と白水社の菅家さん
パネラーとなった東京大学出版会の小松さん(左)と白水社の菅家さん

セミナー後には出席していた大学生から、「編集者ならではのエピソードを教えてください」などの様々な質問があり、普段は参加できない学術会議へ出席できるなどのメリットや、著者と制作に関して「激しい喧嘩になることもあります」といったリアルな体験談についても語られた。

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