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IDTechEx 抗菌技術はどのように機能する?―レポート「抗菌技術市場 2021-2031年」も発表

2021.7.17

IDTechEx社は、抗菌技術および市場に関する調査レポート『抗菌技術市場 2021-2031年』 を発行すると共に、調査記事 『抗菌技術 – どのように機能するのか?』も公表している。

新型コロナウイルスのパンデミックは世界最悪の公衆衛生上の緊急事態の一つであり、世界中の生活のあらゆる面に影響を与えた。パンデミックにより抗菌技術や抗菌製品に対する意識を新たな高みへと押し上げた。

抗菌技術市場のプレイヤーは、新しい抗菌製品に対する空前の需要を満たすために添加剤やコーティング剤を開発し、2~3桁、場合によっては4桁もの成長を遂げている業界プレイヤーもあるとされている。

IDTechExの本レポートで扱っている抗菌技術とは、細菌、ウイルス、真菌などの微生物の活動を抑制、あるいは排除する添加剤やコーティング剤を指す。

新型コロナウイルス感染症のパンデミック前から、抗菌技術は多くの分野において命を救うこと、コストを節減することに活用されてきた。抗菌技術の利用を牽引するキードライバーは、院内感染(または医療関連感染)への対応にある。病院などの医療施設で使用すると、感染率を大幅に低下させることが実証されており、この技術を用いることで多くの人が亡くなるのを防ぐことができ、数十億ドルの節減にもつながる。

一方、食品、農業、水産養殖、建設(HVACシステムを含む)、公共の場など医療分野以外にも多くの機会がある。建造環境で抗菌性の塗料、コーティング剤、添加剤を使用することで、保護する製品の寿命を延ばすことができ、室内空気質への対応を通じて人の健康を間接的に改善できる。抗菌繊維により衣服、カーテン、カーペット、インテリアファブリックに防臭効果を付加することも可能。農業において抗生物質を予防的に使用するのをやめる方向に世界が動いている中で、抗菌剤企業はその穴を埋め始めている。

現在は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、公共の場において接触頻度の高い表面を洗浄することの重要性や、パンデミック後の世界の人々に安全な環境を提供する上で抗菌技術が担う役割が注目されている。

調査レポート『抗菌技術市場 2021-2031年』 では、主要な抗菌技術について深く掘り下げている。

 

Dr Nadia Tsaoの調査記事『抗菌技術 – どのように機能するのか?』では、抗菌技術は具体的にどのように機能するのか?、銀や銅、あるいはポリマーのコーティングは、どのようにしてバクテリアや真菌、COVID-19の場合はウイルスなどの微生物を殺すことができるのでしょうか?など、抗菌剤が作用するメカニズム、すなわち相互作用を探っている。

 

『抗菌技術 – どのように機能するのか?』

IDTechEx  Principal Analyst  Dr Nadia Tsao

 

細胞壁・細胞膜の破壊

細菌、ウイルス、カビなどの微生物は、細胞壁や細胞膜(またはその両方)に包まれた単細胞生物です。この外側の層を破壊することが、微生物を死滅させる一般的な方法です。すべての生物と同じように、微生物の内部では様々な調節機能が働き、最適な状態を保つようになっています。

 

細菌を破壊する方法の一つは、細胞膜の活動を阻害することです。

例えば、銀ベースの抗菌技術は、銀イオンを細胞膜内に侵入させ、細胞内外への輸送を調節する細胞膜内にあるタンパク質と結合させるものです。同様に、高濃度の亜鉛は、それ自体は微生物の成長に不可欠なものですが、細胞膜を通過するイオンチャネルを最終的に阻害することができます。微生物に不可欠な栄養素を取り込めない場合、細胞の成長や増殖は止まります。

 

もっとドラスティックな方法の一つは、単に微生物を壊してしまうことです。

さまざまな抗菌技術が、細胞膜を攻撃して破壊する過酸化物や一重項酸素などの活性酸素種を発生させるものとなっています。シラン第四級化合物などのその他の方法は、単に物理的な方法で細胞膜に穴を開けたり、それを破裂させたりするものです。

 

必須細胞過程への結合やその阻害

抗菌技術は、細胞を内側から破壊することもできます。銀、銅、亜鉛といった金属ベースの技術は、イオンを細胞内に侵入させ、細胞の内部機構の成分(その多くが細胞の生存に不可欠な経路の一部となっている)と結合させるものです。

金属イオンは正電荷を帯びており、DNAやRNAといった負電荷を帯びた遺伝物質とも相互作用します。DNAやRNAまで到達させることが肝心です。

それらなしでは新しいタンパク質を作り出すことはできませんし、DNAの場合は、DNAを複製できないと細胞分裂が止まります。

物体表面への付着防止

細菌やカビと戦うための戦術の一つは、単に物体表面への付着を防ぐことです。細菌やカビは、バイオフィルムを形成する能力を備えています。このバイオフィルムは、高密度でフィルム状の構造をしており、何百万もの微生物を包んで保護しています。

バイオフィルムを形成する上での最初のステップが物体表面への付着です。

抗菌関連企業は、付着が起こりにくい環境をもたらす表面を作り出してきました。その結果として微生物は、増殖したり厄介なフィルムを形成したりすることなく、その残り短い余生をおとなしく過ごすことになるのです。

IDTechEx_抗菌グラフ

作用メカニズムは重要か?

 In short, yes!

科学者たちの間には、微生物を内側から死滅させる抗菌剤が薬剤耐性菌の発生に寄与する可能性があるという大きな懸念があります。

ほとんどすべての生物には、有害物質の除去を担う排出ポンプと呼ばれるメカニズムが備わっています。低濃度の毒素に多くさらされると、その排出ポンプの効率が向上して新しく生まれ変わり、微生物の進化が促されます。また、排出ポンプにより抗生物質を排出することもできるのです。

これまでのところ、科学者たちは辛うじてラボ内で抗菌技術への耐性を引き出しているにすぎませんが、抗菌技術が無責任に使用された場合、このようなことが自然界で起きる可能性が出てきます。

世界保健機関(WHO)は、薬物耐性を人類に立ちはだかる世界の公衆衛生上の脅威トップ10のうちの1つと見なしていますが、有効な抗生物質がなければ、今日のごくありふれた病気や医療処置が生死に関わる重大な問題となりえます。