印刷業界ニュース ニュープリネット

ポストプレスブック2021:大日印刷 “PAPER MAGIC”ブランドでレーザー加工

2021.8.9

FLEXI 600TTが自社を特徴づける一手に

 

p18-1

高守社長(左)と佐藤アートディレクター

大日印刷株式会社は2017年、イタリア・SEI社(国内総代理店:コムネット株式会社)のレーザー加工機『FLEXI 600TT』を導入し、新規事業の立ち上げに着手した。菊半裁判オフセット印刷機2台による印刷受託の事業形態が伸び悩んでいた同社では、他社との違いを打ち出せる成長領域の開拓が大きな経営課題となっていた。レーザー加工の事業開始直後から“PAPER MAGIC”のブランドで専門サイトを立ち上げ、新規顧客開拓に着手。全くゼロから徐々に認知度を高め、現在ではオフセット印刷事業の縮小を補うまでの受注を確保している。

 

スピードと品質に着目

 

同社は1993年に創業。東京都台東区の東京メトロ地下鉄駅から徒歩3分の立地に菊半裁オフセット印刷機2台を設置し、主に商業印刷物を受注している。従業員は11名。都内に工場を持つ典型的な中小印刷会社の形態といえる。
印刷した刷り本は外注で加工。分業化が進んでいる都内ならではの効率的な経営で成功してきた。一方、印刷需要は全体的に減少傾向にある。新たな付加価値を獲得する領域として同社が着目したのが“加工”だった。
同社の高守一哉社長は「生き残りをかけて新規事業に取り組みたいと考え、抜きやカッティングプロッタなどを検討してきました。ただし、すでに他社が市場を確立している中で、後発の当社が特徴を打ち出すことは難しい。加工設備の中で最もインパクトのある成果物が得られるレーザー加工機を選択したのは、他社と差別化できることが一つのポイントでした」と、レーザー加工機を導入した動機を語る。
設備選択にあたっては様々なタイプのレーザー加工機を調査。レーザーヘッドが動いてカットするXY軸方式の機種はアクリルなどの硬質素材に向いているが、同社が指向していた紙の加工ではスピードに制約があり、カット面に焦げが残りやすいことが気になった。調査を進めていくにつれて、SEI社の『ガルバノヘッド』方式を採用したレーザー加工機がスピードや品質、加工エリア、ともに同社に適していると判断。2017年に『FLEXI 600TT』を導入し、新事業の立ち上げに乗り出した。

p18-2

FLEXI 600 TT

通常、レーザーは照射ポイントから加工部が離れるにしたがってレーザー径の形状が楕円形になる。これにより用紙が大きくなると加工精度が低くなる。そのため、加工面積が限られていた。『ガルバノヘッド』はレーザー照射位置に応じて径の形状を補正するもので、これにより精密なカットと加工面積の拡大を両立した。
『FLEXI』ではテーブルをスライドさせながらレーザー照射し、対象物との距離や照射角度の差異を軽減するオンフライ機能に対応。従来型のレーザー加工機はテーブルが停止してからレーザーを照射して加工していたが、オンフライ機能により加工速度が上がり、小ロットから中ロットに適応する。また、高いレーザーの照射精度を実現し、薄い素材のカットとハーフカット、様々な素材への表面彫刻、繊細でデザイン性の高い加工を可能にする。
同社が導入したタイプはダブルテーブルタイプで、加工しながら空いたテーブルに次の素材をセットすることで、連続して加工することができる。

 

サンプルカットを基盤に
デザイン加工が徐々に増える

 

レーザー加工機は現在、固定客を中心としたPOP・ディスプレイ等のホワイトダミー、サンプルと、一般客を対象とした専門サイト『PAPER MAGIC』からのデザイン加工の2つの領域で稼動している。当初はホワイトダミーやサンプルからスタートし、デザイン加工を徐々に加えていった。
制作会社や印刷会社が、広告代理店やメーカーに提案するためのPOP・ディスプレイでは、印刷されていない形状だけのホワイトダミーに加え、本機校正後にカットしたサンプルを制作。クライアントがデザインを検討し、承認されれば型抜きで量産する。
「当社が提供するホワイトダミーやサンプルでお客様がクライアントから信頼を得て、徐々に当社の仕事が増えていきました。そこから印刷の受注につながることもあります。データを頂ければその日のうちに対応することもできるので、スピーディーにクライアントに提案して頂けます」(高守社長)
今ではホワイトダミーやサンプルの制作がレーザー加工事業の基盤となった。年末年始や入学・卒業、父の日・母の日、ハロウィン、クリスマスと季節の行事ごとに定期的に受託が見込める。
同社アートディレクターの佐藤全弘氏は「菊半裁サイズにぴったりの機械で、CCDカメラでマーカーを読み込みながら、印刷した絵柄のアウトラインをカットしてくれます。細かい部分まで絵柄に合わせてカットするので、様々な形状が求められるPOPやディスプレイのサンプル加工に適しています」と評価している。
軸足を固めながら、次第に受注を増やしたのはデザイン加工だった。『FLEXI 600TT』を導入して1ヵ月間は、専門サイトに掲載するためのサンプルを大量に作成。インスタグラムにも掲載して、検索エンジンで上位に表示されるようSEOにも気を配った。
「当初、サイトからのお客様はほとんどいませんでした。1年ほど経過し、認知が広がり始め、次第に軌道に乗り始めていきました。サイトから見積り依頼や問い合わせが入るのですが、上司が栄転するのでボードを作ってプレゼントしたいから今から行ってもいいですか?という問い合わせもありました。その日、機械がたまたま空いていて、対応して差し上げたらすごく喜んでくれました」(佐藤氏)。ケーキの飾りを発注した洋菓子店は、デザイン加工の精度が気に入り、季節ごとにリピートするようになった。顧客がSNSに制作した加工物を投稿することもあり、地道ではあるが、着実に認知度が広がっている。
高守社長は「受注は年々勢いを増しています。新型コロナの影響がなければもっと伸びていたかもしれません」と手応えを感じている。現在の課題は型抜きのデザインのノウハウを持ったデザイナーが少ないこと。例えば“O”の文字の外周をレーザーでカットすると内部が抜け落ちてしまため、ブリッジというつなぎ部分を持たせる必要がある。「デザイナーがどんどんデータを作って頂ければ、レーザー加工の市場の裾野が広がります。販売会社とユーザーが連携しながら市場を盛り上げられればと考えています」と市場の拡大を展望している。

p18-3

レーザー彫刻を施したコースター

p18-4

メロンのPOP

 

大日印刷株式会社
東京都台東区入谷1-17-12
代表:高守一哉氏
TEL 03-5603-1130
FAX 03-5603-1132
https://papermagic.jp/

月刊プリテックステージ5月 合併号「ポストプレスブック2021」