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ポストプレスブック2021:イシワタグラフィックス 県内唯一、クリアファイルの製造を一貫生産

2021.8.9

p08-1 藤澤社長

藤澤克彦社長

正栄機械製作所の折り・溶着加工機を導入

 

1983年、長野県で写真製版業として創業した株式会社イシワタグラフィックスは、2019年に日本全国に被害を及ぼした台風19号の被災から、クリアファイルの製造・販売事業の再興を果たした企業である。その原動力ともなったのが、クリアファイルの加工を自動化する正栄機械製作所の「コンパクト47-2+自動超音波溶着ユニット」である。イシワタグラフィックスの藤澤克彦社長に話を伺った。

 

差別化戦略でクリアファイル製造

 

製版会社から創業し、2005年にUV印刷機を導入して印刷サービスを本格的にスタートさせたイシワタグラフィックス。印刷産業への参入では、製版出身の企業として何ができるのか、他社との差別化はどこにあるかを踏まえて、UV印刷機を選択したという。そして、UV印刷機で作るものとして、「圧着」「パッケージ」「クリアファイル」の大きく3つ考えられる中で、「クリアファイル」に注目した。
当時、すでに「圧着」のハガキやDM市場は活況であったこと、「パッケージ」については資本力を持つ大手企業が展開しているなど戦略としては難しい状況だった。一方、「クリアファイル」はマーケットへの期待感もあり、取り組む企業も少なかった。そこで“日本一安くクリアファイルを製造して提供したい”との思いから、印刷機の導入と同時に「クリアファイル」製造の事業をスタートさせた。
「クリアファイル」の製造は、開発が楽しい事業になっているという。「圧着」や「パッケージ」は大半が受注する市場であり、素材やサイズ、表現なども顧客に依る部分が大きい。しかし「クリアファイル」は、素材も統一されているためコスト負担も少なく、オリジナル製品を通信サイトで販売することもできる。同社では通販サイト「クリアファイルサポートショップ」を開設し、販売している。
クリアファイルの受注の大半は従来からの顧客や制作会社、代理店などが占める。その内容もイベント会社、グッズ製造の会社が使用するものが多く、目的としては学校、美術館、コンサートをはじめとするイベントなどで配布される。
現在、正栄機械製作所の後加工機を2台導入し、クリアファイルを製造している。しかし、一番最初に導入したのは、折り加工用の機械だった。以前はクリアファイルの後加工は外注に頼っていたため、印刷した後、外注先へトラックで輸送していた。しかし、印刷した素材を積んでいたトラックが横転。使えなくなってしまったという事故を経験。これがきっかけとなり、後加工まで内製化することを考え、後加工機を導入していた。

 

災害をバネに事業を復興

 

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2台並んでいる「コンパクト47-2+自動超音波溶着ユニット」

そして現在、同社に設備されているのは、折り・溶着までできる「コンパクト47-2+自動超音波溶着ユニット」である。現在のシステム導入のきっかけとなったのが、2019年、日本全国に大きく影響を及ぼした台風19号による被災である。この時、本社工場付近を流れる千曲川が氾濫し、本社周辺は2m浸水した。藤澤社長いわく「全部、流れた」という状況に見舞われた。現在も隣の塀には浸水時の跡が残っている。
この浸水で本社工場1階にあったUV印刷機、後加工機、サーバーは水や泥で使えない状況となった。しかし、嘆いてはいられない。「仕事を続けようと思っていたので、クリアファイル事業を復活させようと決心したのです」と当時を振り返る。同社には被害を逃れた第2工場に、もう1台のUV印刷機があった。この印刷機を活用し、クリアファイル事業を再興することになる。
しかし、この時、どうしても必要だったのが後加工機だった。「お金の問題ではありませんでした。とにかくすぐに製造を開始できるようにしたい」。その思いに応えたのが、正栄機械製作所だった。そして2020年1月、「コンパクト47-2+自動超音波溶着ユニット」が導入され、同年11月には2台目が導入された。現在、県内で唯一、デザインから印刷・製造までクリアファイルを一貫生産できる会社となっている。
イシワタグラフィックスが採用した「コンパクト47-2+自動超音波溶着ユニット」は、折り機+溶着装置+デリバリスタッカーが一体化したシステム。A4、B5サイズの2種に対応し、ベルトトラッカー方式で素材にキズがつきにくく、生産性向上に加えスポットセンサーとサーボモーターで溶着位置も正確に行われる。
なお2台目は、溶着する向きが1台目とは逆に付けてある。イシワタグラフィックスの要望によって実現したもので、この2台を並べることで、クリアファイルの溶着作業がさらに効率化している。

 

自動化を進め、製品化に取り組む

 

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オリジナルマスクケースも製造

正栄機械製作所のシステムについて、「現在、コロナ禍で従来にはない様々なものをつくらないといけない状況です。ですから設備選択において、どれだけ要望に応えてもらえるのかは重要です」と藤澤社長は語る。
特に、現在のイシワタグラフィックスが目指しているのは自動化である。作業効率を上げ、作業の負担を少なくし、短納期化やコストにも対応でき、働き方改革にも繋げなければならない。「ただし自動化だけを追求すると、出来ることが決められてしまいます。低コスト化など自動化には大きな目的がありますが差別化も必要です。そのバランスを考えた設備導入が必要です」と述べている。
現在、この仕組みを使ってマスクケースも製造している。特に2020年は相次ぐイベントの中止などもあり市場が縮小した。しかし、同じ素材と工程を生かして製造できるマスクケースの受注が増加。特に正栄機械製作所に相談して、マスクケース製造の自動化を工夫。これがきっかけとなり、昨年は業績にプラスの影響を及ぼすほどの受注に繋がった。同じ素材で製造できるフェイスシールドの製造も、デザイン・設計から製造まで一貫して行う。2020年は、コロナ需要の中から生まれた受注がプラス要因を生んだ年となったという。いずれもクリアファイル製造が土壌となって発展したビジネスだった。
今後、コロナ禍が落ち着いてくれば、再び「クリアファイル」が必要とされる市場が期待できる。「クリアファイル」の市場は、今や文具の域を超え、多種多様なシーンで使用されている。社会的にプラスチックの問題も話題にあるが、ゴミにされない、長く使ってもらえる「クリアファイル」作りを目指しており、そのためにも良いデザインや良い製品づくりが必要だと考えている。その言葉の通り、同社は全従業員20人のうちデザイナーを7人抱えるなど、商品化に強みを持つ。
地方の企業は、地方特有の商売が求められているという藤澤社長。首都圏のように分業の環境がないため、全てに対応していく必要がある。そして、「全国で勝たないと、地元で勝てません。今の時代では当たり前の事」と言う。そのためにも差別化がポイントであり、小回りの効くサービスなど中小企業ならではの取り組み方があると考えている。
「最終的には、もっと多様な種類が製造できるような仕組みを作りたいと思う。そのためにも自動化が鍵になります。“商品化”と“製品化”は違う。試作品ができても製造できないと商品として出荷できず、商売になりません。そのためにもメーカー企業さんと一緒に製品をつくることに関わる姿勢が必要だと感じています」と展望している。

 

株式会社イシワタグラフィックス
本社:長野市大字大町1053-31
代表:藤澤克彦氏
TEL 026-251-3100
FAX 026-251-3101
http://www.ishiwata-g.jp

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