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大元堂 1冊から受注するECサイト開設へ、地域の印刷需要活性化を見据える

2020.6.25

大元堂 水谷元泰社長

大元堂 水谷元泰社長

株式会社大元堂(愛知県名古屋市)は1冊からの伝票、冊子などを受注するECサイトを立ち上げる。A3サイズの製本に対応する無線綴機も導入し、特徴あるサービスを提供。地元の同業者や印刷を受託する店舗を対象に開始し、地場の印刷需要の活性化を図る。

同社は1962年、活版印刷業として創業。伝票、封筒、名刺などの事務用印刷を中心に事業を展開し、1983年のオフセット印刷機の導入後、商業印刷分野にも領域を広げた。かつては数千部単位の受注が多かったが、100冊単位の小ロットが増加。ニーズの変化とともに設備を更新し、現在は6名の体制でナンバーやミシンを同時に入れられるオフセット単色機、カラーオンデマンド印刷機の『RICOH Pro C5100S』、感圧紙印刷用のレーザープリンタで生産している。

同社の水谷元泰社長は「活版印刷からオフセット印刷への変わり様よりも、印刷技術による差別化が難しい今の事業環境の方が事業の変化の度合いが激しいと思います。ロットが減るだけでなく、可変印刷やSNSと連動した企画など、仕事の質そのものが変わってきています」と現状を見ている。10年ほど前から始めたSNSに関するセミナーは延べ450回以上。水谷社長の元にはSNSの販促利用に関する相談が寄せられるようになった。実際に2つの地元のプロスポーツチームから、集客やファンの囲い込みのコンサルティングを受託。そこからシリアルナンバー付の入場券や可変のダイレクトメールなどの印刷需要が派生した。

カラーオンデマンド印刷機の『RICOH Pro C5100S』

カラーオンデマンド印刷機の『RICOH Pro C5100S』

「フェイスブックの前と後で、インターネットの活用ががらりと変わりました。ネットの滞在時間が増えましたし、誰でも情報が発信できるようになったわけです。企業もSNSをうまく活用して消費者の目を向けさせたいというニーズが出てきました」

大企業であれば自社でSNSを活用していけるが、中小の企業や店舗では日々の業務に追われて自前での活用が難しい。水谷社長は接骨院や仏具店など、地元の中小事業者を積極的に支援。SNSにとどまらず、チラシのデザインを改善するアドバイスにも応じている。

 

同業者向けのサービスを想定

小ロットのA3判無線綴じ冊子も

 

名古屋市内には古くから地場に根差した小規模の印刷会社が多い。ただ、経営者の高齢化が進む一方で、後継者がいない業者が増えている。固定客を持ってはいるが、後継者がいないため、長期的な視点での設備投資に踏み切れず、小ロット印刷サービスなどの新しいニーズと自社設備のミスマッチが生じることもある。同社では近隣のそうした需要の受け皿としてECサイトを立ち上げる。

小ロット・A3対応の無線綴機

小ロット・A3対応の無線綴機

ECサイトは見積り機能を備えた印刷通販サービスと異なり、同業者が発注しやすいシンプルな構成にする。また、極小ロットや超特急の短納期に対応するため、納品は配送会社以外にも、引き取りや自社配送を想定。今回、シスフォーム社のA3判無線綴機D60Cを導入し、小ロットで受託する業者が少ないA3サイズの大型冊子も提供する。

「1冊からの受注はデリバリーコストがかかりますし、数が集まらなければ生産効率が悪いので、皆がやりたくない業務だと思います。A3サイズの冊子も本来は割が合わない。そうした同業者の困りごとを引き受けようとサービスを思いつきました」

もちろん、ゆくゆくは一般企業や教育機関、消費者に対してのサービスの展開を見据えている。ただ、“同業者価格”を設定し、同業者が利益を出せる価格体系を整える。コンセプトは「印刷需要者と地元の同業者との縁をつなぐ」。印刷需要者に喜んでもらい、皆で儲けようというのが水谷社長の考えだ。将来的には全国の印刷会社に、同社が開発したECサイトとプリンタのパッケージの限定販売を見据えている。

そうした地元の事業者とともに歩む同社のスタンスは、現在、新型コロナウイルス感染症の影響で苦境に立たされた飲食店の支援にも向いている。秋田のデザイン会社が始めた先払いチケット『先払い秋田飯応援チケット』を取り入れ、5,500円で購入すると6,000円分の飲食ができるチケットを印刷して地元の飲食店に無償で配布。SNSで拡散するためのPOPや、QRコード付きのステッカー、販売したチケットを管理する表、会計処理のノウハウもまとめて提供した。

水谷社長は「営利だけで企業は残れません。当社と同じような規模の印刷会社の方と一緒に元気になっていければと思います」と述べる。7月に開設予定のECサイトは先月、地元の新聞に取り上げられた。水谷社長は「同業者や印章業などからさっそく問い合わせがありました」と手ごたえを感じている。

 

株式会社大元堂

愛知県名古屋市昭和区菊園町1-11

http://www.daigendo.co.jp/