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モトヤ 新元号「令和」の墨書「令」の字形に対応した筆文字3書体を無償提供

2019.4.25

モトヤ 対応フォントモトヤは、新元号「令和」を発表した記者会見で掲げられた墨書「令」の字形に対応した「新楷書3/5」「大楷5」の3書体を、無償で提供すると発表した。

モトヤの楷書体フォントは、プロの書家がデザインし、活字時代から品質や美しさに定評がある。同フォントでは「令」の下部分は「マ」の形状だが、平成31年4月1日の新元号「令和」発表の場で示された墨書では、明朝体と同じ形状になっていた。

 

本来、「令」の字の下の部分は、どちらでも構わず、どちらも間違いではないというのが正しい。しかし、記者会見で使われた墨書「令」と同じ形状の楷書体を求める声や字形に関する問い合わせがモトヤにも数多く寄せられているという。

そこで同社では、対応の一環として、今回の無償提供を行うことを決めた。 なお、提供書体は「新楷書3/5」「大楷5」が対象で、5月13日より同社のフォント専門サイトから無償で提供する。

今回提供するフォントは製品版の文字セットのうち、「令」および「令」を部首に含む文字のみ(20文字強)を収録したもの。ダウンロード方法など詳細については同社サイトを参照。

 

モトヤ フォント専用サイト www.motoyafont.jp

 

【書体 による 「令」の字形の違いについて】

(モトヤ発表資料から)

 

 

「令」の字について各書体毎に見ると、明朝体などの印刷に様式化された書体では縦棒になっているものの、手書きに近い楷書や教科書では、“マ”になっており、書体によって字形は異なる。

「令」の字は、小学校4年生で習得する漢字だが、学習指導要領では学年別漢字配当表の字形に沿って指導をすることと記されてる。

その漢字配当表の「令」の例示字形は、“マ”になっている。

つまり、文部科学省としては“マ”で教えるということがいえる。

 

モトヤ 文字の違いについてまた、文化庁の文化審議会国語分科会による平成26年度の世論調査では、様々な書き方の有る漢字9文字のうち、「令」は“マ”と書くのが適切であるという意見が最も多い。しかし、国語審議会では、平成28年の「字体・字形に関する指針」の中で、どちらでも構わないとしている。(学習指導要領とは異なる見解とも言える)

 

一方、書道に起源を求めると、中国の唐の時代(西暦618年~907年)の3大書家と呼ばれる、歐陽詢(おうようじゅん)・虞世南(ぐせいなん)・褚遂良(ちょすいりょう)でも、それぞれ字形が異なる。

歐陽詢の「九成宮醴泉銘」と、虞世南の「孔子廟堂碑」は縦棒であるのに対し、褚遂良の「雁塔聖教序」では“マ”になっている。

“書聖”と呼ばれ、後世の書家にも大きな影響を与えた、東晋時代(西暦317年~420年)の書家である王羲之(おうぎし)も“マ”と縦棒の両方の「令」を書いている。

 

では、明朝体に代表される印刷文字についてはどうなのか。

明朝体は、読む事に特化して発展した、筆文字とは発展の過程が異なった書体である。版木に文字を彫る際に曲線や点画の微妙な角度は、再現に時間がかかるため、宋から元の時代に字画が直線化し、複数人で早く彫れるように発展した。

 

つまり、「令」の字形については

①“マ”でも縦棒でもどちらでも構わない。

②一般に手書きで書く際には、“マ”を多用するものの、縦棒で書いたとしても間違いではない。

③書に原点を求める場合も書家によって様々な字形の違いがある。

④字形の違いはいわば、習慣の違いともいうものであり、字体の違いとは考えなくても良い。

というのが結論となる。

 

 

ちなみに・・・

漢字の歴史は、秦の始皇帝が文字を整理統一して「篆書」が誕生した時に遡る。その後、「隷書」⇒「草書」⇒「行書」⇒「楷書」という順番に生まれた。

例えば、隷書は篆書を簡略化して生まれ、草書は隷書を速書き(走り書き)する過程で生まれ、行書は草書をもう少し整えて読みやすくし、楷書は一画一画を続けずに、点画をはっきりさせた整った美しさを特徴とした書体というように完成されてきた。

 

モトヤの楷書体は、モトヤ社員で書家でもあった、山田博人氏がデザインしたものだが、唐の前の六朝時代(西暦222年~589年)の文献も含めて調査をし、歐陽詢の「九成宮醴泉銘」を基本にしたうえで、「令」の字は形がとりやすい、手書きとしてなじみの有る“マ”を採用したということになる。