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PRINT2017レポート 自動化が収益性の鍵に(寄稿)  

2017.9.25

【全国ぷらざ協議会 会長代行 五百旗頭 忠男氏 寄稿】

 

9月10日から14日まで、米国・シカゴのマコーミックプレイスで、国際印刷機材展『PRINT2017』が開催された。現地を見学した全国ぷらざ協議会の五百旗頭忠男会長代行から寄稿頂いた『PRINT2017』のレポートを紹介する。

 

革新・教育・連帯でグラフィック・コミュニケーション界の奮起を目指したPRINT2017

あのJoe Webb博士が直近の米国の印刷出荷高(2016.12~2017.5)が対前年比8.4%の低下を見せるにつけ、印刷人への奮起の啓蒙書「第三の波」を出版される中で、PRINT2017は9月10日(日)から14日にかけてシカゴ市のマコーミック展示場で開催された。

かつてはマコーミック展示場3ホールまで使っての重量印刷機をメインとする展示会であったが、今回は南館1ホール450社余りの出展、2万1000人の入場者を数えたものになり、小振りの展示会と映った。しかし、この展示会にかけた関係者の強い業界奮起への意気込みに並々ならぬものを感じた。

Best-For-PUR装置と五百旗頭氏(左)

Best-For-PUR装置と五百旗頭氏(左)

 

PRINT2017規模別出展社順位
順位 出展社名
1 コニカミノルタ/MGI
2 キヤノン
3 Standard Finishing(ホリゾン)
4 Xerox/XMPie
5 HP
6 リコー
7 富士フィルム
8 スクリーン
9 Duplo USA
10 Muller Martini

 

最大出展社はコニカミノルタ。ビッグ10出展社の内、何と日本勢が7社を占める内容で、かつての重量印刷機が中心の時はドイツ欧州勢に日本勢が食い込む形であったが、印刷デジタル化の今日のPRINT展はこのように変質してしまった。とは言っても日本勢メーカーは米国向けニーズを吸収してその見せ付け方も米国流となっていて日本の展示とは一味変えている。

印刷産業をかつてはグラフィック・アーツと呼んでいたが、今ではグラフィック・コミュニケーションズと変更呼称されるようになってきた。PRINT2017のテーマは「あなたのビジネスを成長させる」とし、この展示会の価値の大部分は、約450社のベンダーのスタンドにあると主張する。ベンダーのプレゼンテーションは、重量マシン時代のアナログプロセスからデジタル的に利用可能な媒体への印刷の変換の様相を作り出していて、そのすべての分野で新しいリーチと関連性を見つけられる。

世界最大級の印刷物やグラフィックアートのバイヤー、意思決定者、製造業者が集まり、今年は、自動化が収益性の鍵であることに注目が集まっているようだ。その視点はROIのメッセージを共有するためにPRINT2017に集まってくる。

「実展示場とオンライン展示場」を組み合わせた世界最高レベルの組み合わせの展示会とは、うたい文句通りだ。PRINT Dailyは展示会の速報雑誌であるが、嬉しいことに毎朝、ホテルの部屋まで運んで投げ入れてくれる。同時に電子ブックでネット上での閲覧も可能にしてくれている。

 

主催者NPES(北米印刷産業機材協会)は単に物売りを目指すだけでなく、来場対象者にテーマ「あなたのビジネスを成長させる」を掲げ、多様な教育プログラムを設け(相当数の無料講座あり)、有料講座は50分の短縮講座とし、座学を短くして、教わったことを展示会場で確かめてもらう工夫を凝らしている。変化の激しい時代での新しいアイディアをつかむことにつながるのだ。

労働力ソリューション、教育セミナーと実習、PRINT17プレビュー・概要講義、パネルディスカッション、著名なリーダースピーカーによる早朝講演会、ショーフロアでの学習体験・シアタープレゼンテーション(会場内には実務上の困りごと対策セミナーをPrinterverseとIdealliance Solutionsに無料のTheaterを開催)、それにLearning Experience Theatre(ブース3861)などである。有料講座は40本以上も設けられていた。

「著名なリーダースピーカーによる早朝講演会」は朝8時から8時50分までのゲスト講師によるものであった。セント・ジョセフのCMOマイケル・チェースは創造的でユニークな印刷アプリケーションを紹介してくれた。印刷物を基点としたARの使用例を20ほど見せてくれたがその一つ、フランスのCastoramaは、子供のための童話に設計されたAR対応の壁紙インテリアであるMagic Wallpaperを出している。多様なマスコットキャラクターがあしらわれていて、スマートフォンアプリでる1キャラクターをスキャンすると、童話がスマホに現れてくれる。キャラクター2個をスキャンすると2体にまつわる物語が語られる。無数の話がmagic paperを通して採取できるのだ。幼児はそれを見聞きしながら眠りについてくれるとする。
https://www.youtube.com/watch?v=r-9lQ45_l7Q これは秀作だ。日本ではなかなか紹介されない刺激的な話であった。

 

PRINT17事前セミナー

PRINT17事前セミナー

 

第4次革命・IoTが見えてきたPRINT17

インダストリー4.0という用語は、いくつかの主要な革新デジタル技術を組み合わせたものであり、これらはすべて同時に成熟し、あらゆる製造業を変革してくれるものである。世界経済フォーラムの創設者兼会長であるクラウス・シュワブ(Klaus Schwab)教授の最近の言葉は、第4次革命の規模を視野に入れ次のように述べている。「これまでの産業革命とは対照的に、この技術は1次関数ペースではなく指数関数的に進化している。」つまり、それは、物事の「もの」と「方法」を変えるだけでなく、今年の2017年のPrint 2017イベントでは、印刷物の製造方法、サービスプロバイダーの生産方法、印刷サービスプロバイダーの変化に伴い、デジタルテクノロジーに合わせてビジネスを変革するためのさまざまな進歩が見えてくる。
米国ではデジタル印刷技術は今や市場の投資焦点を支配している。今年のイベントでは、オフセット技術からデジタル高速インクジェット技術への移行を強調しながら、電子写真技術の重要な進歩を強調している。伝統的なオフセット技術からシフトする理由は単に、デジタル印刷は小ロットの冊子ものを印刷するのに、より効果的かつ効率的な方法であるからだ。カスタマイズされたカタログ、パンフレット、雑誌など。複雑なパーソナライズされたダイレクトメール/トランザクション文書デジタル印刷技術の革新は、カラー印刷のコストを削減し、品質を向上させ、基板オプション(被印刷物)を増やし、投資収益率を向上させてくれる。これらの改良によって、デジタル技術の採用が促進され、最終的に印刷物の加工法が変わってくる。

 

2017年の「Must See ‘Ems」賞のリストは、まさに、この市場シフトに添っている。毎年開催される「Must See ‘Ems」プログラムは、業界に大きな影響を及ぼすと予想される技術革新を網羅してくれる。今年の賞は以下のデジタル印刷機を認定している。

・セラミックタイル用EFI Cretaprint C4ツインデジタルインクジェットプリンタ
・Fujifilm J Press 720S
・HPインディゴ50000デジタルプレス
・リコープロVC40000
・Screen Truepress Jet 520NXおよび520HD、SCインク付き
・Xerox Trivor 2400 HFインクジェットプレス
・Xerox iGen 5ホワイトドライインク

 

今日の非常に競争が激しい中で、変化し続ける米国市場では、単にデジタル印刷機を手に入れるだけでは不十分である。今日の米国市場リーダーは、業務の合理化と自動化への投資に注力している。デジタルプレスは、製造システムの一要素にすぎない。すべての印刷会社は、ワークフローの「タッチ」の数を減らそうとしている。

印刷生産ワークフローは、最初の注文照会から始まり、支払済請求書で終わる。このワークフローのより広い定義とは、生産現場を顧客のオフィスにまで広げることで、お客様とお客様の課金部門と会計部門に至るまでの一貫注文を取り入れることを意味する。

米国のほとんどの印刷人は、自動化が収益性の向上の鍵であることを知っている。ではなぜ、今まで以上の投資に踏み切らないのか。Print Media Central(Printerverse)がセッション「自動印刷ショップ:恐怖要因を克服する」を開催していた。見えない対象物へ投資する恐怖感が付きまとう。そこでその恐怖感を取り除くべく、このプロセスで快適を体験できる無料アプリを導入して試みるのも方法と講師は薦めていた。ソフトのプレゼンにはここまでしなければならないのかもしれない。

 

FUJIFILMのブースのハイライトは、同社の生産用インクジェットプラットフォームであるJ Press 720(JetPress720)であった。絶えず、ここには人だかりで盛況を極めていた。同機はIntegrated Graphics In社に納入される。同社のSambaヘッドは外販されていて、ここでも外販姿勢を強調していた。ハイデルベルグのPrimeFire、LandaのS10にはSambaが搭載されていて、高い評価が得られている。
小森アメリカはIS29を出品したが、同機はReindl Printing社へ小森にとって5台目の機械として納入される。また、最新モデルのリスロンGL840 PerfectorがトロントのAstley Gilbert社へ納入される。
HPは、Lightning Souece社にPageWide T240 HD輪転機を成約して導入するが、2024年までに同機ならびに単色機を24台設置する数百億ドルに達する驚く内容の契約を会期中に発表している。Indigo12000はダラスにある75年の歴史を持つ商印会社、Blanks Printing&Digital Solutionsに納入される。
コニカミノルタは最大ブースで出品したが、これからはハイエンドの商業印刷分野へMGIデジタル加飾機とあいまって食い込んで行くとし、この場でリード発掘に努めるとしている。事実、MGIデジタル加飾機は相当数の成約を確保している。
SCREENは米国進出50周年の節目を迎え、新しいデジタル高速UVラベル印刷機を発表した。日本から唯一のprint2017視察団20名ほどを派遣する力の入ったものであった。
ゼロックスは地元勢として入口至近のブースを確保し、来場者が途切れない感じになっていた。米国最大のボタン製造会社であるAordable Buttons社にiGen 5 Press with White Dry Inkが、カナダのWestkey Graphics社にはiGen 5 Press のfステーションが納入される。
キヤノンは新しいUVgelインク技術を使用した、新機種OcéColorado 1640を発表していた。drupaで参考出品されたインキジェット・デジタルオフセット印刷機Voygerの映像展示がされたが、来年年央に正式発表となる。ブランケットからの画像層剥離に独特の工夫が凝らされている。
リコーはRicoh Pro VC60000をDirect Technologies社に納入する。数台のRicoh Pro C9100 をHKM社に納入する。
スタンダード・フィニシング社(ホリゾン社の北米代理店)の北米市場のデジタル印刷後加工の分野では大きい存在となっている。
新しいベンチャー企業が意欲的に出品しているのもPrint2017の特徴である。

Rutherford+X-Riteは既存印刷機に後付けできる枚葉印刷機インキコントロールのクローズドループシステムを展示していたが、既存機の小ロット対策にうってつけと引き合いも多いと言う。今回、Must See’Ems賞を獲得していた。
Ultimate Bindery v5はニアラインおよびインライン連結フィニッシング機器の仕上げワークフローを構築するソフトウエアである。Must See’Ems賞を獲得していた。プリプレスの段階でポストプレス指示ができるのがみそ。主にデジタルプレスの後を受け持つ、ホリゾン、Duplo、Morganaなどと関係を持っている。
Best For PURなるドイツのSpleess氏が発明したPUR釜を日々清掃しなくてすむ装置が展示だれていた。要はPUR釜を引き出しフートで覆ってドライエアーを注入すると言うものである。既に40セット販売していると言う。

 

Fur Heap社のBred Heap氏と久しぶりに再会した。ルイビル市のOverNightPrint.comを7年前に見学したとき以来である。今回はDaVinchなるweb to print用の動きの早いデザイン制作ソフトを出品発表された。革新的なビルトインビューアは、照明、角度、およびスケールの360度のプレビューで、正確な3Dプルーフを生成してくれる。彼はInkRouterなるwebを通して印刷会社が無料で使える印刷調達ソフト(Must See’Ems賞を受賞)も発表した。Rent A Pressなる受託印刷の仕事をラスベガスで行っている。
彼は日本製の先行するデジタル印刷機を4台導入したが結局は、2台を出してしまった。代わりと言うことか、後発のデジタル印刷機1台を入れたが、大変評価が高くこれを2台に増設するとしていた。今もって、ルイビル工場はKarat水なし印刷機、Rapida75G、Rapida105Gが活躍している。一般印刷物の主流はまだ、水なし方式オフセットだと評価している。

 

PRINT2017会場でオフセット印刷の実演で唯一健闘したのが、RMGTの9シリーズ両面印刷機、LED-UV搭載、チャンバーコーター搭載機(Must See’Ems賞を受賞)であった。9シリーズ機はコンパクトにして性能の高さが受け、世界でここ数年で200台以上出荷されている。デジタル印刷機が投資対象の大勢といわれる中、現実的にはまだ、米国でも印刷の主流はオフセット機で8割以上はこなされていることを見落としてはならない。オフセット機の持つ高速生産性、消耗維持費の安さはまだ、当面続くであろう。マルチチャンネル、オムにチャンネルに移行しつつある時代に対応のしやすいのはデジタル印刷であることは確かであるが、仕事量からみるとオフセット印刷にはかなわないのだ。

 

PRINT2017で見られたプリントメディアの価値づけのための努力

PRINT2017で見落としたくない関係者のプリントメディアの価値付け努力を披露したい。

Printerverse TheaterでのJoe Webb博士(右)

Printerverse TheaterでのJoe Webb博士(右)

Joe Webb博士の啓蒙書「第三の波」はアマゾン書店で販売されているが、HPブースに来場された方は無償でこれを受け取れた。この表紙は普通の印刷でなく、隠し模様が印刷され、HPのスマホアプリ、リンクリーダーで読み取ると本書の参考解説などが出てくる。本文の中ページにもリンク先をスキャンすると参考文献が現れる。むろん、著者の追記事項も書き込まれている。
コニカミノルタは表紙が加飾加工された「New Print Industry-Trends and Opportunity」と「Cloud Production-A New Path To Profitability」を著者のサイン入りで配っていた。
さらに、リコーブースではクリッカブルペーパー技法を用いてスマホアプリ、クリッカーを入れると随所のページで追加参考情報が読み取れる本、「Introduction To Graphic Communication -A New Kind Of Book Combining Print And Multimedeia Engagement」を調査のサイン入りで配ってくれた。
これは印刷需要のさらなる掘り起こしにつながる記念本となってくれた。

 

米国の大手印刷会社・年商5000万ドル以上の利益率は0.8%に甘んじている。これは大量通販カタログ、大量DMをこなす体制を取っていたからで、今やメディアシフトが起きる中で米国大手は動きが取り難くなっているのだ。他方、中小印刷会社の利益率は6.45%で小ロット化・デジタル化の時代のニーズに合わせる変革を巧みに取ってきたことが伺える。直近の米国印刷出荷高が大きな低下を見せる中でJoe Webb博士は印刷ビジネスの方向転換を啓蒙書で示唆されているのだ。
PRINT2017はdrupaから見ると小振りに映るが、この場を通しデジタル革新・教育・連帯の風を興さんとするもので大変、内容の濃いイベントと受け止めた。21000人の来場者数は少なく映ろうが、これはバーコードによる正味カウントであり、来場した方は購買意欲を持った勝ち組の方々が見えているのだ。出品社は総じて商売につながったとしていた。