Wegner社 高画質とB2対応で小ロット印刷の付加価値実現

Wegner社 高画質とB2対応で小ロット印刷の付加価値実現
ヘニング・ローズCEO(左)とマネージングディレクターのインゴ・ヴェグナー氏(右)
ヘニング・ローズCEO(左)とマネージングディレクターのインゴ・ヴェグナー氏(右)

 ドイツ北部のブレーメン郊外に拠点を置く印刷会社Wegner GmbH(Wegner社)は、昨年8月、デジタル印刷サービスの強化を目的に、富士フイルムのインクジェットデジタル印刷機「Jet Press 720S」を導入した。「大部分が2,000部以下」という小ロット印刷物の付加価値アップに大きな成果を挙げている。
 
「B2サイズ・広色域」が決め手に

 Wegner社は、1985年に設立。書籍、カレンダー、カタログ、リーフレット、CDジャケットなど、幅広い印刷物を手がけ、いち早く取り組んだインターネット受注サービスで業績を伸ばしてきた。2004年にはデジタル印刷のサービスを開始。2007年、自社内に最初のデジタル印刷機を導入した際は、箔押し、UVコート、エンボス加工、無線綴じ・中綴じラインなどの後加工設備も拡張するなど、クライアントの多様なニーズに応えるべく設備増強を積極的に進めてきた。
 「Jet Press 720S」は、同社にとって2台目のデジタル印刷機となる。徹底的な市場調査と検証テストを経て導入を決定した。デジタル印刷設備を強化することで、より付加価値の高いサービスを提供することが主な狙いだ。
 導入の経緯について、同社のヘニング・ローズCEOは「数年前にB2デジタル印刷機の存在を知った時、当社が目指すべき新たなビジネスはこれだと直感しました。当初は、既存のデジタル印刷機を補完する役割を期待しており、“B2サイズ対応”という点に最大の関心がありました。しかし、『Jet Press 720S』をテストしてみると、印刷品質が圧倒的に優れていました。色域が広く、4色インクセットの印刷品質が、オフセットのプロセス4色の再現品質をはるかに上回っていることに驚きました。これによって、お客さまに提供できる印刷サービスの幅が広がるだけでなく、より高品質の印刷物を安定して提供することができます。最終的にこれが導入の決め手になりました」と語る。
 さらに、ローズCEOは操作性についても触れ、「現場にとっては、従来のオフセット機と同じ感覚でオペレーションできることも大きな魅力」と評価している。
 
機動力が高まり、表現の幅が広がった

 現在、同社の仕事は、ほとんどが2,000部以下で、約75%が1,000部以下だという。まさに、『Jet Press 720S』のメリットが最大限に発揮される領域だった。
 「当社の場合、大ロットのジョブはわずかですので、『Jet Press 720S』は生産体制の効率化・機動力向上に最適でした。部単位の印刷も多いため、『Jet Press 720S』の活用によって、ほとんどのジョブでリードタイムを数時間短縮できています」(ローズCEO)
 加えて、品質面で最もメリットを実感しているのが、色域の広さだという。同社は、プロファイルの運用など、カラーマネジメントのノウハウを豊富に有しており、CMSに関してドイツ印刷・メディア産業連合会(BVDM)との協業も重ねてきた。こうした経験を活かすことで、『Jet Press 720S』の品質性能を最大限に引き出している。
 「色域の広さは、多くの利点をもたらします。まず、カレンダーやカタログなどの特定のジョブで求められる『パントーンカラー』を広く利用できます。また、色再現の鮮やかさが増すだけでなく、画像のコントラストが鮮明になり、ディテールのより精細な表現も可能です。さらに、非コート紙でもコート紙同様の出力結果が得られます。今後の課題は、デザイナーの教育が挙げられます。Jet Pressの広色域をより効果的に活かせるよう、デザイン力をさらに高めていく必要があると考えています」
 
新たな可能性を追求し、さらなるビジネス拡大へ

 『Jet Press 720S』によってクライアントに提供できる印刷物の幅を広げ、印刷サービスの差別化をまた一歩推し進めたWegner社。ローズCEOは「明確な収益アップを達成できると確信しています」と手応えを語る。
 「まだ導入からそれほど日は経っていませんが、『Jet Press 720S』には、大きな可能性を感じています。現在、その優れた性能をより多くのお客さまに伝えるため、Jet Pressによる印刷サービスのプロモーションにも力を入れています。従来機と比べて“サイズが2倍、品質も2倍”になったことを強調したマーケティングキャンペーンを展開しています」
 最後にローズCEOは「これまで、富士フイルムとは、オフセット印刷用の刷版を通じてのお付き合いでしたが、Jet Pressに関するサポートも一流です。私たちは、より強固になった富士フイルムとのパートナーシップのもとで、『Jet Press 720S』のプロモーションをさらに推進し、その可能性を限界まで模索したいと考えています。短期的にも長期的にも、『Jet Press 720S』は当社のビジネス拡大に貢献してくれると確信しています」と富士フイルムとのパートナーシップにも触れる。
 
B2対応枚葉インクジェットプリンタJetPress720S

インクジェットヘッド
 徹底したコンパクト化により、抜群の色見当精度を実現した。ジェットモジュール単位で交換できる独自の機構により、メンテナンス性にも優れる。用紙幅のヘッドによって搬送方向にワンスキャンで印字する「シングルパス方式」で「2,700枚/時」という高速出力を可能にした。B2サイズ対応に加え、独自の高速顔料凝集技術「Rapic技術」により、一般的な印刷本紙を出力。印刷本紙に前処理を施すプレコンディショナーと独自開発の水性顔料インク「VIVIDIA」が反応し、用紙表面でインクを凝集させることで、インクの滲みを抑える。
 最先端のSAMBAヘッドは、精密なMEMS技術によって製造され、1,200×1,200dpiの高解像度出力を達成。吐出量は最小2plで、さらに4段階の打滴量制御により、解像度以上の品質を実現した。B2サイズのシングルパスを実現するためのインクジェットバーは、17個のヘッドモジュールで構成され、モジュール単位で交換も可能になっている。

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