=MIS、ワークフローと自動化ソリューション=【事例ビジネスモデル】新藤コーポレーションPODの稼働率最大化で印刷前工程を効率化安心の小ロット・短納期対応でデジタル印刷が急成長

=MIS、ワークフローと自動化ソリューション=<br>【事例ビジネスモデル】新藤コーポレーション<br>PODの稼働率最大化で印刷前工程を効率化<br>安心の小ロット・短納期対応でデジタル印刷が急成長

株式会社新藤コーポレーション(東京都墨田区)は、成長を続けるデジタル印刷のビジネスに対し、PODの「稼働率の最大化」を図るため、今年6月にプルキャストが開発したワークフローソリューション「PC OneFlow」を導入した。今後、Webを入り口としたデジタル印刷のボリュームが拡大する中で、受注窓口の省力化・自動化が課題となることを見据え、いち早く市場拡大に向けたシステム構築に取り組んでいる。

Web窓口の受注が増加

オフセット印刷による高品位美術印刷、商業印刷を主な事業に手掛けてきた新藤コーポレーションは、デジタル化の流れを受け、2013年にB to CのWeb to Printサービスとして同人誌印刷専門の「プリペラ」を立ち上げた。また、Web to Printの受注サイトのみで印刷設備を持たない通販サイトの生産の受け皿としてサービスを提供する、B to B to CのPODビジネスを展開している。

Webを活用した2つのデジタル印刷事業サービスは、年々受注が拡大。オフセット印刷中心のビジネスモデルを展開してきた同社に今後のデジタルシフトを感じさせるほどの成長の兆しを見せ始めている。そこでPODの「稼働率の最大化」をデジタル印刷のビジネス戦略の大きなテーマに、将来を見据えた受注システムの構築に着sindo手し始めた。

同社のデジタル印刷部門はリコーのデジタル印刷機が3台設置されている。原則的に4名のオペレーターが、受注から印刷、加工、出荷まで担う。これまで手作業で3台のデジタル印刷機に仕事を割り振り、日々、最適な生産フローを組んでいた。しかし、同社が運営する「プリペラ」、そしてB to B to Cの取り引きが拡大し、さらに生産効率やコストの面から既存のオフセット印刷工程から小ロット印刷がデジタル印刷へと移行していく中で、手作業で行っていた受注データの処理がオペレーターの負担になり始めていた。

実際、B to B to Cの仕事は、卒業論文からカタログ、チラシ、オンデマンドブックなど多岐にわたる。冊子のページ数も10頁前後から500頁に及ぶ大ボリュームまで、小ロット・短納期で対応している。印刷から加工、出荷のラインまで内製化されていることが、こうした煩雑さを伴う印刷物の短納期化を実現できる要因になっているが、前工程の負荷は重くなる。「プリペラ」がターゲットとする同人誌印刷はイベント直前まで納期を持ってくれるサービスが重宝される。ぎりぎりの入稿で対応するためには受注の処理速度の速さが重要で、印刷や加工ラインは物理的にハードを追加すれば解決できるが、前工程はシステム化されていない場合、人手が必要になる。スタッフを増やせば固定費が上がるため、全体的な製造コスト高の構造から脱却することができない。

こうした人的な負荷の高まりは、その後の印刷工程のミス・ロスに繋がり、結果として顧客の信頼を落とすことになる。Webを通したビジネスでは1回のミスで顧客が離れかねない。さらにプリペラのようにB to Cでコンシューマーを相手に提供するサービスは、SNSを通じて情報が拡散するため、良い評価を得ることが重要になる。そうした課題をクリアし、顧客対応力を強化するためにもシステムの活用が絶対条件だった。

sindo プルキャストの『PC OneFlow』の機能は、限られたリソースの中で「稼働率の最大化」という同社の課題と合致。デジタル印刷の戦略で掲げた、自動化・省力化を実現するシステムとして導入した。

『PC OneFlow』は、入稿データや受注情報、生産計画、プリフライトチェックなどプリプレス処理を自動化するワークフローソリューションである。外部ソフトウェアやデバイスとの連携にも柔軟に対応する。同社の場合、受注された案件はデータをチェックし、予め設定された仕様ごとのフォルダに割り振られる。各フォルダは3台のデジタル印刷機と紐付けされており、案件・仕様に応じて、出力デバイスを選択して印刷する。データの不備がなければ基本的に自動的に受注から印刷まで流すことができる。

『PC OneFlow』導入に加えて同社のデジタル印刷事業は、カラーマネジメントによるオフセット印刷との品質の統一が特徴に挙げられる。オフセット印刷で長年培ってきた“高品質な印刷物”を提供しようとする姿勢は、デジタル印刷でも妥協しない。その一方で、デジタル印刷機の強みである小ロット・短納期対応を最大限に発揮できる仕組みを構築することで、他社との差別化を図っていく狙いだ。

多能工化で24時間体制の構築へ

今後の展開として、B to Cの専門サイトの種類と、B to B to Cの取り引き拡大を挙げる。すでに確立している製品のブランドに別の製品を追加するLine Extentionの考えに基づいて専門店の種類を増やすべく、着々と準備を進めている。『PC OneFlow』の導入は現状の課題解決だけでなく、そうした今後の成長を見込んでのことだった。

新藤コーポレーションの田畑晴基COOは、「印刷通販のサイトはボリュームが見込めるマーケットであれば続々と立ち上がってくる。顧客の期待に応えていけば今後も十分、取り引きが増えてくる可能性がある。B to Cの専門サイトもマーケットがそれぞれ違うため、種類を増やしても顧客が重複することがほぼない。サイトが一つ増えればその分、受注が増加する足し算効果が発生する。サイト探しの検索ワードもピンポイントが多いことからも専門型の拡充が必要になる」と強調する。また、「案件当たりの利益額・利益率がオフセットに比べて低いため、デジタル印刷は数をこなさなければならない。収益を上げるために極力、人手をかけず生産コストを抑える構造を持っていなければならない」と省力化・自動化・内製化の必要性を指摘する。

現在、デジタル印刷の主なマーケットは小ロット・短納期の案件だが、今後は中・大ロットの仕事もデジタルで対応することになるという田畑氏は、「これまでロットや納期からオフセットとデジタルの使い分けを得意先に提案し、印刷物を提供してきたが、今後は、企業から一般消費者(個人)のニーズまで、多種多様な印刷ニーズに応えていく柔軟性が求められる。市場が求める価格の範囲でいかに小ロット、多品種の印刷ニーズに早く対応できるかが必要不可欠な要素となる。PC OneFlowの導入により、オペレーターの負担が軽減される。今、製版部門が24時間動いている。製版部門の多能工化を進めることで、PODも24時間稼働の体制を整え、朝に加工から出荷まで出来るようにしていきたい」と今後の展望を語る。

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