【ビジネス】文化ビジネスサービススペシャルカラーの“遊び心”を新事業に多角的なメディア活用で窓口を拡げる

【ビジネス】文化ビジネスサービス<br>スペシャルカラーの“遊び心”を新事業に<br>多角的なメディア活用で窓口を拡げる

デジタル印刷機で豊富なアイデアを形にしている株式会社文化ビジネスサービス(齋藤秀勝社長)は、事業活動で得た企業間ネットワークを活用し、デジタル、アナログを問わずメディアを複合的に結び付けたビジネス展開で価値を創出している。リコーのカラープロダクションプリンター『RICOH Pro C7100』のホワイトトナーを活用した商材や、同社の既存サービスを起点にした潜在的な需要の発掘に向けて、顧客、提供側の双方が感性を引き出せる環境づくりに注力。顧客の喜びに寄り添う真のパートナー企業を目指している。

柔軟に時代に適した事業を展開

Pro C7100で印刷したアイデア商材
Pro C7100で印刷したアイデア商材

1974年に創業した同社は、水処理施設メーカーやゼネコンに向けた青焼き、図面製本、タイプ印刷などを主力事業としてきた。1980年頃に普通紙複写機、ワードプロセッサを導入してデジタル化に着手。1980年代後半にMacintoshと同時にカラー出力システムを導入し、ワードプロセッサによる印刷原稿の入力業で蓄積した知見をもとに、DTPを前提とした印刷事業を開始した。

1990年代中頃にはA1サイズのバブルジェットプリンターを設置。大判の図面や地図の複写業で都内有数の受注件数を誇った。同時期にテレビ番組の大道具美術、小道具美術事業をスタート。写真データの加工・編集をはじめ、印刷した長尺サイズの用紙にアデムコラミネート加工を施し、撮影用の壁紙などを制作していた。

小道具美術の業務では入力・DTPの業務で培った経験を活かし、デザインから手掛けるようになった。2007年には、デザイン・設計会社販促提案を主とするActual Design(ACD)を設立。ACDも業態変革し、公共上下水プラントメーカーや民間プラントなどを顧客に、BIM/CIMに関した3DCADを使用して水インフラの3D設計、施工管理構築サービスを開始している。現在もACDで制作した3DCADのデータから3DCG化や映像化、また図面を印刷、製本している。

同社の齋藤社長は1980年代に「先代社長が『これからはデータの時代だ』という考えのもと、設備を拡充していきました。当時は、カラーの出力機を所有している企業は少なかったので需要は高かったです。当社は所持している技術や機材から新たに何ができるかを考え、事業を展開してきました」と次々と事業を生み出す同社の柔軟性の源泉を説明する。現在、売上構成比は、プリント事業が4~5割、テレビ番組関係の制作が2~3割、動画制作などのプロモーションが1~2割となっている。

1to1の仕組みでサービスを提案

RICOH Pro C
RICOH Pro C7100S

モノクロとカラーのデジタル印刷機を分けて所有していた同社は、用途によって印刷機を使い分けていた。技術の進歩で次第にカラー機でもモノクロ機並みの速度がでるようになったことを受けて、ジョブを割り振る手間をなくそうと、高性能なカラー印刷機への入れ替えを検討。ホワイトトナーの高い訴求力に注目し、2015年にリコーの『RICOH Pro C7100』を導入した。

齋藤社長は「例えばパール調または、メタリック調の特殊紙にCMYKで印刷をしても絵柄が用紙の存在感に負けて目立ちません。ホワイトトナーで下地を印刷すればCMYKをくっきりと見せることができます。これは小道具美術としてはもちろん、パッケージ印刷でも面白いと感じました。小ロットから受注できることを活かし、商店街の小規模店舗のオリジナルパッケージなどができると考えています。印刷の延長と捉えるとある程度のロット数が欲しくなってしまうので、印刷の延長線上ではなく、1to1の仕組みで考えるパッケージです」と豊富な事業構想を描いている。

そのほかの1to1の商材としては、スマートフォンの写真や自分の描いたイラストから制作できるオリジナル卓上カレンダー「自己満カレンダー」や「親ばかカレンダー」を考案し、1部からの注文も受け付けている。

見えない需要をシーズで顕在化

現在、Pro C7100では主にテキストやセミナー資料、バリアブルDMなどを印刷している。スペシャルカラーを使った取り組みでは、安全、防災の観点から、リフレクション(反射材)を使ったステッカーや案内表示版を提案している。また、蓄光材とホワイト組み合わせた蓄光版は、今までシルクスクリーン印刷でしかできなかったものがデジタル印刷機で提供できると考え、制作に取り掛かった。

齋藤社長は「当社の事業は現状、7~8割が受託業務で、お客様の要望に沿った製品やサービスを提供しています。近年、提案型の業務が徐々に増加し、1~2割を占めるようになってきました。ニーズを追うだけでなく、当社のサービスや印刷などのシーズを活用し、顕在化していない需要を形にしていけたらと思います。シーズを増やすには、思いついたらすぐに動くことです。オリジナル卓上カレンダーも、まず『自己満』『親ばか』を商標登録するところから始めました」と、潜在的な需要の開拓を見据えている。

同社は、既存事業の広がりから得た企業間ネットワークを活かし、紙への印刷物だけでなく、映像美術、イベント用のプロモーション動画、展示会のミニチュア制作を含めた設営など幅広い業務を手掛けてきた。そうした“つながり”がアイデアの引き出しを増やす強みとなっている。1つの事業に特化する業態よりも、多角的に顧客が求める結果を導き出す業態を指向している。

同社の提案型業務は、デジタル印刷機に支えられている。イベントの映像制作の案件が入れば、100部、200部の小ロットのパンフレット制作を自社で、数千部のチラシを必要としている場合をオフセット印刷の協力会社に依頼する。これにより自社のシーズ以上のサービス創出を可能とし、顧客の“欲しい時に、必要な部数だけ”という要望に応えている。

メディア同士をつなげて

間口を広げる

齋藤社長は「映像制作から、パンフレット、カタログへと1つの仕事が他の仕事を派生させます。受注窓口が紙からではなく映像からというケースも増えています。“メディアを変える”ことで提案の幅が広がりました。印刷しか引き受けられないと、お客様が限られてしまうので、メディア同士をつなげ、広げていくことが大事です」と間口を広げることの重要性を強調する。

同社はサービスを提案する際のドアノックツールとして、様々なオリジナルノベルティを取り揃えている。厚さ0.2㎜ほどの木の板『ツキ板』を用紙として活用し、卓上カレンダーや賞状を制作している。会議・出張中などのアナウンスを表示できる『ステータスカード』は、口に出しにくいちょっとした要望をさりげなく周囲に伝える。

齋藤社長は「Pro C7100は潜在的なニーズの発掘に役立つ機械だと思って導入しました。一般のお客様から見ると『白のインクなんて何に使うのだろう』と思うでしょう。だからこそ面白い。リコーの遊び心のある機械で、当社の企業理念である『常に考える』を実践し、制作側、お客様の両者が楽しみながら関われることを目指しています」と述べ、「スペシャルカラーは主力でなくても、持っていると輝く武器です。興味を持ってもらうきっかけを作るツールにもなり、メインを引き立たせてくれます」とPro C7100を評価し、今後の事業展開への寄与に期待を寄せる。

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