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Ferture特集記事

田中手帳
インデックス加工をさらに美しく、強固に
新製法を開発し、特許を取得

tanakamain

2016.8.8

 

完成本からインデックス

 

田中社長(左)と有元さん

田中社長(左)と有元さん

田中手帳株式会社は平成25年(2013年)、強度と美しさを兼ね備えたインデックス加工の製法で特許を取得した。

同社は来年、創業80年を迎える老舗の手帳製本会社。手帳に特化した製本ラインを持ち、クライアントからの高い品質要求に応えている。国内で数台しか稼動しない特殊な装置が多く、その中の一つがインデックス加工機。完成本からインデックス加工が可能で、アドレス帳や手帳をはじめ、総合カタログ、通販カタログ、カラオケ本、名簿、取扱い説明書、各種パンフレットで採用されている。

インデックス加工はトムソン抜きで紙面を加工した後に製本するのが一般的だが、型が必要となるため、小ロットには向かず、納期も必要となる。同社が導入している加工機は型を使わず刃で断裁する。小ロットにも対応し、トムソン抜きに比べ、納期も短いのが特徴で、外注加工の依頼も寄せられる。

加工サイズは天地50~320㎜、左右50~250㎜、厚さ2~50㎜。加工形状は、不均等ピッチや不均等枚数、二列・三列、左右二列加工、インデックス部とインデックス部のピッチを広げたフラッグインデックスタイプから選択可能となっている。

切り抜いたインデックス部にはアルファベットや数字を印刷する「スタンピング」にも対応している。インデックス部に文字を印刷してトムソンで抜いた後に製本した場合、文字の配列がずれやすくなるが、「スタンピング」では文字が美しく配列される。

インデックス加工機は1994年に導入。「インデックス事業部」を立ち上げ、機械に改良を加えながら、国内でも評価される水準にまで品質を高めた。現在、大阪で9台、東京で1台が稼動している。

 

クライアントの要求に応え研究・開発

 

インデックス加工機

インデックス加工機

今回、特許を取得した製法は、まず、オフセットでの印刷物のインデックス部にスクリーン印刷で両面UVコーティングを施す(インデックス部分の文字、数字はオフセット印刷で施されていない)。製本・抜き加工後、インデックス部に文字や数字を印字。文字のインキを定着させるため、さらにUVコーティングする。三層加工となるが、特殊な製法によりコーティングの被膜を厚くし、強度を高めることに成功した。

書店や文具店に並ぶ手帳は、消費者が手に取り、レイアウトや質感を確かめて購入される。購入後も年間を通じて使われるので、耐久性が求められる。

インデックスが施された手帳は、目的のページまでのアクセスが早く、その使いやすさから需要が高まっている。一方、店頭に並ぶインデックス手帳は、来店客が手に取って、ページめくりの確認が繰り返されると角が曲がり、商品価値が下がってしまうことがある。このため、田中手帳にはクライアントからより強度の強いインデックス加工が求められていた。

同社では田中社長を中心に、さらなる配列の美しさと強度を兼ね備え、かつ被膜の厚いインデックス加工の研究を開始。最適なコーティング手法、コーティング剤などの検証を重ね、平成25年、「製本物及びその製造方法」として特許を取得した。

製本後にインデックスを加えるため、印字面が揃う

製本後にインデックスを加えるため、印字面が揃う

新たなインデックス加工はクライアントに採用されたが、出荷前の検品作業は徹底した。製本の際は2丁付で製本するため、仮に一つの製品に不具合が発生していると、もう一つの「相方」にも同じ不具合が発生する。このため、一つの不良品を見つけると、ペアとなっているもう一つの不良品を探す必要がある。

「新しい製品なので徹底的に品質を守ろうと。ピッカピカのものはピッカピカのままで出荷したい」

同社の田中尚寛社長の想いは現場で徹底され、見事に応えている。

 

『カク手帳』を開発、限定販売

書きやすくマスが配列されている『カク手帳』

書きやすくマスが配列されている『カク手帳』


 同社が生産する手帳は、年間で約1,100種類、約1,000万冊で、そのほとんどがOEM製品。厳しいクライアントの品質要求に対応しながら、高い技術力を備えてきた。今回、長年、憧れを温めてきた自社ブランド製品として、『カク手帳』を開発し、大阪地域のある書店で限定的に販売した。

『カク手帳』の開発の中心となったのは同社の有元佑里さん。美術大学で商業デザインを学び、卒業課題でノートを制作することになった。実際の制作に際して田中手帳に相談に来たのがきっかけとなり、ノートから手帳に姿を変え、“産学”共同の新商品開発が始まった。「マーケットを創る、価値を創る」という新製品開発の可能性に心をひかれた田中社長は、学生だった有元さんを採用し、『カク手帳』の商品化を決断した。

『カク手帳』は、“書く”と“角”を掛け合わせ、マスを効果的に使えるよう配慮されたレイアウトを採用している。ダイアリーのページは日付と日付の間の隙間を空け、スケジュールなどを書き込むメイン部分と、メモなどの補助を書き込むサブの部分で構成されている。各月のページの後にはプロジェクトの進行管理がしやすいよう、1週間から6週間まで週単位で書き込めるページを設けた。ノートページにもマスが配置されており、書きやすくしている。もちろんインデックスはコーティングと印字がほどこされている。有元さんは「毎日開く手帳だからずっときれいに使いたい」と、『カク手帳』への想いを語っている。

『カク手帳』はクライアントへの配慮から限定販売のみ。ただ、新商品の開発や販売の経験は、同社のノウハウとなり、手帳の企画支援やデザイン提案などに反映されるだろう。そうした新たなチャレンジは、「お客様のあったらいいなというご要望を実現する」という方針のさらなる強化につながるに違いない。