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Ferture特集記事

三美印刷
YOSHINO無線綴じラインでPUR製本
製版から製本までトータルで品質管理

sanbimain

2016.8.8

 品質管理面で高い効果

 

総合工場の荒井部長(右)とバイディングセンターの小高部長

総合工場の荒井部長(右)とバイディングセンターの小高部長

三美印刷株式会社は2011年に芳野マシナリーのPUR対応の無線綴じ製本ラインを導入し、順調に稼動させている。当初、無線綴じは外注で対応していたが、内製化により製版から印刷、製本までの総合的な品質管理が可能となった。PUR製本の技術力も向上し、現在では同業者から製本の依頼が増えているという。

同社は明治28年創業の印刷会社。出版印刷を主力とし、書籍、学参から学術論文まで、高度な組版と印刷技術でクライアントの要求に応えている。2007年には環境ISO14001の認証を取得するとともに、東京都荒川区の総合工場が日本印刷産業連合会制定の「グリーンプリンティング工場認定」を受け、環境配慮型の企業としても評価されている。

1993年には製本部門の「株式会社サンビバインディングセンター」を設立したが、中綴じのみを生産し、無線綴じは製本会社に外部委託していた。2007年、取引先の製本会社が製本オペレータとともにサンビバインディングセンターに無線綴じ機を設置。2011年には独自にPUR対応の無線綴じ製本ラインを導入し、本格的に無線綴じ製本の内製化をスタートさせた。

同社総合工場部の荒井健治部長は、「時間のロス、輸送コスト、品質管理の面から無線綴じの内製化に着手した。とくに品質管理面では納品後のコスレ、キズ等のトラブルが減っている」とそのメリットを強調する。現在、内製化比率は6割。取引のある製本会社とのネットワークを大切にしながら、納期対応やコスト削減を進めている。無線綴じの内製化により、製版から製本までのトータルの品質管理がしやすくなった。品質向上のために、製本部門からプリプレス部門や印刷部門に相談をすることが増えているという。

 

PUR技術を高める

 

芳野マシナリーの無線綴じ機(撮影のためカバーを開けています)

芳野マシナリーの無線綴じ機(撮影のためカバーを開けています)

無線綴じラインを立ち上げる際には新たに製本技術者を採用。機種選定のポイントは「PUR」という新たな手法に取り組むに当たっての芳野マシナリースタッフへの信頼とサポート力が決め手となった。

立ち上げから無線綴じラインに関わっているサンビバインディングセンター製造部の小高英一部長は、「新しいチャレンジのパートナーとして、アドバイスを含めてやりやすいと感じた」と述べる。予想よりも早く設置から本稼働まで進み、その後も順調に運用されている。

PURに取り組んだ動機は“環境”が大きな要素となった。溶融に180℃必要なEVAに対し、PURは120℃。エネルギー消費量が少なく、リサイクル適性もAランクで、環境対策に力を入れている三美印刷としては最適な製本手法だった。また、「EVAは外気が40℃を超えると糊が劣化し、本が壊れてしまうことがある。PURは環境による劣化が少ない」(小高部長)と、品質の側面からも優れていると判断した。

小高部長は「アジロ綴じの延長の感覚」と述べるが、手動で製本機を制御していた経験はPURの立ち上げに大きく寄与した。ページ数、用紙厚、用紙の種類によって、糊の塗布量は異なる。本の仕様から出来上がりをイメージしながら、最適な糊量の供給やミーリングの強弱を決定する必要がある。

PURの場合、糊量が少なくても強度が出せる利点がある。一方、塗布量が少なすぎるとバラケの事故につながる。同社ではまず0.4~0.5㎜の塗布量からはじめ、経験値を積み上げながら、次のステップに移行していった。現在では0.2㎜の塗布量で製本することもある。

「アジロのPURは注意が必要。通常、EVAであれば1㎜の糊の盛量になるが、盛量を少なくするPURの場合、アジロの目の奥まで糊が届かないことがある」(小高部長)。当初は避けていたPUR糊を使ったアジロ製本も納品実績もでき、着実に技術力を上げている。

 

EVAから切り替えも早く

 

芳野マシナリーの万力丁合機(撮影のためカバーを開けています)

芳野マシナリーの万力丁合機(撮影のためカバーを開けています)

基本的にEVAで可能な製本はPURでもできるという。その中でも受注比率が高いのは学参物。公開性と耐久性が求められるためで、“使われる本”だからこそ需要が増えている。また、絵本やポケットブックも耐久性が求められ、PURの指定が多い。

「ノドにまで印刷されているベタものの場合、EVAでは接着力が落ちる。難しい絵柄でもしっかり接着できるのはPURの特徴」(小高部長)

同社の場合、EVAとPURの切り替えはメーカー推奨の3時間に対し、約1時間で済んでいる。予備の糊釜を用意し、作業中に糊温度を上げて準備しているためで、セッティングだけならば30~40分で完了する。PURからEVAの切り替えであれば30分で終わる。

「切り替えはかなり早い方。小ロット化しているので機械を極力止めたくない」(荒井部長)。

製本後、糊の乾燥時間は半日~1日。その後、カバーや帯の工程に移る。ページ数やクライアントの要求によって乾燥時間は異なるが、「印刷が良くても良い本ができなければ評価が下がってしまう」(小高部長)と品質を最優先している。

芳野マシナリーの無線綴じ製本ラインを導入して5年が経過。同業者からの製本の依頼が増え、「PURはサンビで」という指定もある。「サンビバインディングセンターといっても三美印刷のブランド。良い物を作って自身を持って製品を届け続けたい」(小高部長)と、さらに技術力を高めていく。