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【表現力】鈴木紙工所
事業ドメインは“ペーパーカット”
レーザー加工機『Flexi600TT』で生産力増強

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2020.5.21

レーザー加工の見本

レーザー加工の見本

株式会社鈴木紙工所(愛知県弥富市)は印刷機材商社のムサシからコムネットが扱うSei Laser社の『Flexi600TT』を導入し、レーザー加工事業に“スピード”という優位性を加えた。

同社は1970年に創業し、今年で50周年を迎える。事業は段ボール箱の製造から開始し、その後、クリスマスケーキや電動工具、陶磁器などの美粧箱に領域を広げ、工場と設備を拡張していった。

工場を移転・拡張してから数年後の1985年、同社は転機を迫られることになる。プラザ合意による円高不況により主要の取引先が倒産。ある企業から救済を持ちかけられたが、先代の社長は経営の独立性を維持するために救済を断り、大きな痛みを伴いながら事業再構築の道を選んだ。その後、封筒メーカーから依頼された抜きの業務が業績を上向かせ、仕事が増えるにつれてコルゲータやサックマシンを廃棄し、トムソン機を増設していった。

そうした経緯を経て、“ペーパーカット”が同社の事業ドメインになっていく。現在の設備はメインのトムソン機4台に、油圧式断裁機、ロータリーダイカッター、XY軸式レーザー加工機、GCC社の小型レーザー加工機で、2019年暮れにSei Laser社のガルバノ式レーザー加工機『Flexi600TT』を加えた。パート社員を含めて22名の社員がペーパーカットのエキスパートとして、カット、ミシン罫、筋押し、浮き出し、断裁、レーザーカットなどの加工から、カミコン(紙製仕切り)、オリジナルステーショナリーなどの紙製品の企画・製造・販売までを担っている。

同社のもう一つの転機は2008年のリーマンショックだった。それまでは“名古屋景気”もあって、ほぼ24時間365日稼動で封筒の型を抜いていた。中部地域の系列企業や下請け企業を大事にする風土が安定的な事業基盤を築いていたが、リーマンショック後はメインの封筒業務が3分の2に減少し、再び事業の見直しを促されることになる。

現社長の鈴木裕一氏は少年時代に、かつての先代が苦労する姿を見て、経営の厳しさを知った。「いつも崖っぷちのそばを歩いているという危機感が常にあります」。その意識が新しい事業創出の意欲へと突き動かしていった。

 

レーザー加工で新事業創出

 

圧倒的な加工スピードのFlexi600TT

圧倒的な加工スピードのFlexi600TT

2009年、印刷機材展を訪れた鈴木社長が目を止めたのはレーザー加工機だった。「以前、細かすぎて難しいブライダルツールの抜きの仕事を頂いたのですが、お世話になっている方からの依頼で断り切れず、粗い部分のみトムソン加工して納品し、お客様に手で切って仕上げさせてしまったことがありました。その時に型抜きの限界を感じました」。レーザー加工機を見た鈴木社長は「これならあの時のような仕事が簡単にできる」という可能性を感じ、同年、XY軸式のレーザー加工機の導入を決断した。

スタート直後はなかなか仕事に結びつかなかったが、レーザー加工事業の一つのステップになったのは、金魚をモチーフにした弥富市のゆるキャラ『きんちゃん』のペーパークラフト化だった。市もゆるキャラをPRできていなかったため、鈴木社長の意向と合致。使用許諾が得られてからはペーパークラフトの製法を学び、設計者を探して完成に至った。開発に際して頻繁に打ち合わせした市の担当者との良好な関係を築き、紹介された地元の新聞に取り上げられた上、市長にも会わせてもらった。販売に不安を感じていたが、市長の市内の対象一学年に一斉に配りたいとの意向で、まとまった数を受注できた。さらに市内の文具店でも販売してもらえるようになった。

しかし、ゆるキャラのペーパークラフトだけでは事業としてまだ小さく、レーザー加工機でその後も様々な製品の試作を重ねた。その中からレーザーで切り抜いた似顔絵切り絵を載せた名刺が、「すごいね、と名刺を渡した人から全く違うリアクションが返ってきました」との反響を得た。“切り絵”の販売を思いついた鈴木社長は、市場調査したところ、切り絵作家による手切りやアート作品などで、ビジネスとして取り組む企業がなかった。

切り絵は通常モノクロの世界。同社では切り抜いた複数の色紙を重ねてカラフルな切り絵を開発し、違いを打ち出した。当初は結婚式場に向けてブライダルボードを提案しつつ、東海地区最大級のものづくりイベント『クリエイターズマーケット』に出展し、ブライダルボードをはじめ、しおりやコースターのペーパーアイテムを販売。徐々に方向性が見えてきた。

「これまで請負い専門だったのが、自分で商品を作ることによって、B to Cの世界が見えてきました。同時に、鈴木紙工所はサンプルを頼めばすぐに渡してくれるという評判が広がって、B to Bの業務にも波及するようになりました」

B to Cの切り絵ビジネスでは『KirieFabbrica』という自社ブランドを立ち上げ、Web上でオリジナルの切り絵が注文できる『しあわせきり絵』を販売。紙と紙を合わせるところから、商品名に“しあわせ”を入れたという。主に結婚式や記念日などの贈り物に利用されており、切り絵以外にもレーザー加工機を活用したステーショナリーも揃えている。レーザー加工機は必要な時に製作できるため、オリジナル商品でも在庫が不要でリスクが低い。

B to Bでは印刷会社やデザイン会社から企画提案時のサンプルの依頼が増えた。型がいらないので様々な形状のモックアップが制作でき、クライアントの意思決定が早くなることが評価を得た。サンプルから本製品の生産にも結び付いていく。

 

圧倒的なスピードのガルバノ式

 

レーザー加工事業の一層の強化を図り、導入したのがガルバノ式の『Flexi600TT』だった。ガルバノ式はXY軸式に比べて高速処理が特徴。Flexi600は1万㎜/秒でカットする。同社のタイプはスライディングテーブルが装着されており、最大で600×1,360㎜の加工エリアで生産性を高めている。

導入の動機は3、4年前から見積りでマッチングしないケースが増えてきたことだった。生産性を高めてコストを下げ、さらにスピードを上げなければ競争に勝てない。

1,000個のファイバークリップを納品するにはXY軸式の場合、約2週間かかっていた。過去には1ヵ月間、一つの仕事にかかり切りで、他の仕事が入れられずに受注機会を失うこともあった。『Flexi600TT』では1,000個のファイバークリップのカットが数日で終了する。「圧倒的なスピードのメリットを感じます。実機の稼動を見れば、Sei Laserの加工速度のすごさはすぐに分かると思います。インパクトのある設備は武器になります」

大量生産・大量消費型の需要が減り、特定の市場に適合する多品種・小ロットの商品やサービスの需要が増えている。「あるコミュニティに刺さるアイテムが必要と感じます。弥富市は金魚以外にも文鳥が有名で、愛好家の聖地になっています。愛好家は文鳥のアイテムを欲しがります。でも普通の人には興味がありません。数多くの小さい市場の需要を満たすためには小ロットでたくさんの種類を提供することです。多品種・小ロットで生産性を確保するにはFlexi600TTが欠かせないと感じています」

レーザー加工事業の売上比率はまだ4%だが、全くのゼロから徐々に立ち上がってきた。その分、伸び代も大きい。鈴木社長は“ペーパーカット”をブランディングしていく上で、「レーザー加工の技術をもっと知ってもらうこと。私たちのような加工会社からもっと発信していく必要があります」と強調し、『Flexi600TT』を加えたレーザー加工事業のさらなる成長を確信している。