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【表現力】加藤製本
「PAPER ONE」を活用した加飾技術で付加価値向上
売上実績に裏付けされた顧客目線の商品提案

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2020.5.21

Paper One

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老舗製本会社として豊富なノウハウを持つ加藤製本株式会社は、2017年にコムネットが販売するSei Laser社(イタリア)のレーザー加工機「PAPER ONE」を導入し、加飾分野に進出した。“顧客の求めるもの”を第一に考える同社は、これまで培った特殊な製本・紙工技術と新しい加飾技術を駆使し、多様なニーズに応えることで、消費者が求めてやまない商品開発を進めている。

同社は、明治時代に創業した製本所に生まれた初代が、1941年に設立。創業当時は人手を費やし、作業工程の多い製本を手作業や手動の機械で行っていた。1960年代以降、機械化の波に乗り、国内でも早い段階でミューラー・マルティニの無線綴機を導入するなど生産効率を高めた。

加藤隆之社長は「きちんと製本された本が飛ぶように売れる時代に、人材の増強、設備の導入を繰り返し、当社は成長してきました」と当時を振り返る。2000年代、国内全体で本の売れ行きが落ち込み始める中、2005年にPUR製本に着手。「従来の糸かがり綴じや、強度を保つために糊を多く塗っていた製本と比べ、PUR製本は少ない糊で強度を保ちつつ読みやすい仕上がりが可能だったので、その技術が世界的にも評価され、当社が知られるようになりました」。

世界最大規模の展示会drupaなどからみる近年の業界の傾向としては、印刷から加工までの一連の工程をデジタル化することが業界の未来につながると目されている。加藤社長は「デジタル化で生産性が高まったにも関わらず、市場規模は縮小し続けています」と別のアプローチの必要性を強調した。

2016年に米国・フロリダで開催されたグラフ・エキスポに参加した加藤社長は、同展示会で受講したセミナーの“印刷産業は死んだと受け止め、新しい事業を立て直していくべきだ”との言葉を受け、印刷産業の役割に思いを巡らせた。

「印刷会社はチラシやカタログ、ポスター、POPなどを制作していますが、制作すること自体が目的ではありません。お客様の集客力を上げる、売上を増やすなど、利益を高めるアシストをすることが私たちの役割です。様々な産業との関わりが深い印刷産業はまずどのようなお客様が何を求めているか知ることが大事です」と製造業としての原点に返り、「デジタル化はあくまで手段です。買いたいと感じるチラシやカタログ、読みたいと思わせる本を供給することを一番に考えています」と語る。

顧客の役立つ製品を提案するには、消費者が店舗の商品のどこに注目し、興味を引かれて、購入するのか学ぶ必要がある。加藤社長は、“売り場の通路に立って考える”ことに着目し、消費者の目線を追う科学的な調査結果を分析。調査の中で多くの目を引いていた箔押し加工をはじめとするレーザー加工やUVニスによる盛り上げなどの加飾分野への進出を決めた。約3年前から取り組んでいる加飾分野は現在、同社の売上ベースで1割ほどを占めるが、前年比500%の割合で成長している。

 

品質と速度を両立する「PAPER ONE」

 

Paper Oneで表紙を加飾した御朱印長

Paper Oneで表紙を加飾した御朱印長

加飾分野では、2017年にコムネットから導入した、「PAPER ONE」を中心とするレーザー加工機を使用した製品の需要が最も高いと言う。「PAPER ONE」は、レーザー光をスキャニングミラーで操作して対象物に照射するガルバノタイプ。「当社でテストしたレーザー加工機の中では、コムネットの品質が一番高く、処理スピードも高かったです。少しでも焦げついたものは商品にすることが困難ですが、その点で問題になったことはありません」と生産性と品質が両立していた。

レーザー加工機は製版システムを備えているものもあるが、それでは製版作業中にレーザー部分を稼働することができない。「PAPER ONE」は、版を別工程で制作できるため、レーザーを止めることなく生産できる。特にスピード面で「仮に版1枚に15分間の制作時間がかかるとすると、1日当たり2、3時間無駄な時間がでてしまいます。この差はとても大きいです」と評価する。

導入する際には、「製本会社がそんな設備を導入してもうまくいかないから、止めたほうがいい」と言う意見も多かったがその後、X-Y軸タイプのレーザー加工機も追加で導入。それでも生産が間に合わないのが現状で、そのほとんどは自社商品。加飾分野は製品の企画力、デザイン力が求められるので、そうしたノウハウと一体でなければ使いこなせないと言う。

X-Y軸タイプは、コムネットが扱うGCC社(台湾)の機械を導入。速度はでないが、ヘッドが動くため角度が付かずに真っ直ぐカットできる。厚みのある素材を使用する際や繊細なデザインが要求される際に活用しており、「一長一短あるので両機とも重宝しています。加飾分野の販路拡大を推進している現状、両機とも欠かせません」と適材適所で使い分けている。

レーザー加工機を使用した商品では、木材の表紙に微細な加工を施した、意匠性が高く見栄えの良い御朱印帳が人気を博している。東京・中目黒のSTARBUCKS RESERVE ROASTERYとコラボレーションした御朱印帳は、60冊が即日完売となった。そのほかにも、表紙が木材で中身にPUR製本を採用した「和モダン木表紙ノート」や、表紙の折り返しにレーザー加工、背表紙に丸みを持たせた特殊な製本を施した商品など、これまで培ってきたノウハウと新しい技術を自在に組み合わせ、デザインの自由度を飛躍的に高め魅力ある商品提案を可能にしている。「加飾分野に進出する以前は、出版社、印刷会社が主な取引先でしたが、現在は百貨店や雑貨、文具店、観光地のお土産屋、寺社など多岐にわたっています」と事業領域拡大の足掛かりを得た。

 

多様なニーズに対応できる企業を目指し

 

従来、加飾はコストがかかると顧客から敬遠されることが多かったが、同社は投資した額以上のリターンを提示することで受注の獲得に成功している。商品を売り込みたい顧客に対し、安価なカタログではなく、商品の魅力を伝えることで消費者の購買意欲を高める提案をしている。

「以前はデジタル化で生産効率を上げることが重要だと考えていましたが、それは生産者サイドの都合です。軸足を顧客に置くことで、顧客の利益に直結する提案ができます。導入する機械の見定め方も変わりました。ただスペックを見るだけでなく、生産効率は二の次で、お客様の利益に適うことができる機械なのかどうかが第一の判断基準になりました」。

同社の特殊な製本技術や加飾技術を用いた付加価値の高い商品開発は、ネット通販の加速などによる印刷物の価格競争にとらわれることがない。「自動化され、量産された商品は、使用できる用紙の種類やサイズも限られ、いかに価格を下げるかという方向性です。集客力なども考えると一般の中小印刷会社では太刀打ちできません。一方、顧客に寄り沿い、アイデアと技術に裏打ちされた商品は一定の価値が認められます」。

特に同社は、実際に店頭で販売されてきた商品の売上実績に裏付けされた、説得力のある提案を強みにしている。「製本会社は下請け仕事というイメージが根強いので、今後は製品開発力をさらに向上させ、商品力・販売力・宣伝力の乗数効果を高めていきます。“顧客が最も信頼を寄せる製本・紙工会社”、と言われるようなブランディングをしつつ、紙の製本と紙工に関してはどこよりも多様な提案ができる会社を目指します」と展望を語った。