【技術】SCREENデジタルコンテンツ ファクトリーE2E“全自動・半自動”でEQUIOSの能力引き出す

【技術】SCREEN<br>デジタルコンテンツ ファクトリーE2E<br>“全自動・半自動”でEQUIOSの能力引き出す

カラーマネジメントや製版処理、面付けなどプリプレス作業を自動化するSCREENのワークフローシステム『EQUIOS』。その能力を最大限に生かすためには、自動処理に必要な仕様が定義されたジョブの生成が欠かせない。『EQUIOS』は工程を設計するテンプレートで、自動的にジョブを生成する機能を持つが、上位からの作業指示が不足していると自動的に処理することができない。

SCREENの『デジタルコンテンツ ファクトリーE2E』はその穴を埋めるもので、『EQUIOS』の潜在能力を引き出すソフトウェアである。多品種・小ロット化により、デジタル印刷機や、小ロット適性を高めたオフセット印刷機の導入が進んでいるものの、ワークフローシステムに至るまでの工程で、専門性の高い限られた人員によるジョブの生成作業が発生し、全体の生産性が上がらないケースが見受けられる。そうした課題に対する現実的な解として、『デジタルコンテンツ ファクトリーE2E』が2月に開催されたpage2020でも注目を集めた。

多品種・小ロット対応力アップへ

全工程の生産性を上げる

全世界でデジタルデータが爆発的に増加しており、現在では地球上の砂粒の数に匹敵する45ゼタバイト(10億テラバイト)に至るとされている。

産業界ではビッグデータやAIの活用に着手。あらゆるシステムがネットワーク化され、データを利用して高度に自動化するインダストリー4.0が実現してきた。

一方で、人が判断する業務がシステム内に少しでもあればネットワークが分断され自動化を妨げることも課題として挙げられる。

印刷産業でもシステムや工程間の相互情報伝達を可能にするデータフォーマットのJDFの活用が進んできたが、印刷業務は、注文後お客様の仕様を設計からスタートするオーダーメイド型で標準化が難しく、多種多様な仕様が存在するため、自動化のハードルが高い。ワークフローシステム、印刷機、後加工機の自動化機能を最大限に生かしきれない原因がここにある。

理想的なのは、営業担当者が入力した見積りデータがMIS(経営情報システム)に登録されて、受注の仕様が決定し、ワークフローシステムが仕様データを元に自動処理するというフロー。しかし、見積り時に『中綴じ』という仕様が入力されていても、紙の目や折り丁まで印刷に必要な情報が記載されるケースはほとんどない。自動で面付けする場合、見積り情報だけではワークフローシステムが要求するパラメータが足りないのである。抜けている情報を加えて、ワークフローシステムに最適のジョブに修理するのは人手になる。

株式会社SCREEN ICTソフトウエア ソリューション統轄部ソリューション推進一部の大濱英嗣マーケティングマネージャは、「必要なパラメータが足りず、それを補う作業が発生するので自動化できないというケースが見受けられます。自動化というと100%を目指そうとなりがちですが、自動化できるものは自動化で、自動化できないものは半自動でという割り切りが必要だと思います。自動化できない部分を効率化するのがデジタルコンテンツ ファクトリーE2Eです」と述べる。

同社は、例えば電子商取引で、CSVデータで大量に発注された情報を、受注側の基幹システムが受けられるよう変換し、いつ、何を、どこに納品するかを素早く的確に処理できるEDI(電子データ交換)を手掛けてきた。現在、印刷、製版機器のシステムソフトウエア開発をはじめ、印刷関連のシステムインテグレーション案件の請負開発にも応じており、『デジタルコンテンツ ファクトリーE2E』には同社のEDIのノウハウが反映されている。

変換・マッピングでつなぐ

PDFから構造化も

つなげるを実現する仕組み
つなげるを実現する仕組み

『デジタルコンテンツ ファクトリーE2E』は様々な方法で取得したデータを読み取り、変換し、評価して各システムに投げ分ける機能を持つ。100以上の処理の組み合わせが可能で、自社に必要な処理のカスタマイズ開発にも対応。とくにデータマッピング(異なるシステムで違う表記でも同じ意味を指すパラメータを関連づける処理)機能が強力で、文字列、数値、時刻計算、日付フォーマットなど豊富な中間処理を可能にしている。

変換は『CSV⇒CSV』に限らず、SQL、XML、JSON、Officeなど別のフォーマットのデータマッピングができるほか、特定フォーマットで記載されているPDFの文字列を自動で構造化することもできる。PDFに記載されている“日付”(キー)の下にある文字列が“年月日”(バリュー)を定義づけし、自社のMISに必要となる形式にマッピングすることで、例えばクライアントから送られてきたPDFの発注書から手作業でMISに入力する手間を省く。

『EQUIOS』との連携では、ジョブ生成をサポートする。自動処理ができるジョブはそのまま『EQUIOS』へ転送してジョブ登録。不足しているパラメータがあれば、足りない部分だけが表示されるので、その部分だけを入力もしくは選択する。綴じの情報を入力すると自社設備で可能な折り丁を表示したり、部数から出力デバイスを自動的に選択したり、リピートオーダーの仕様を修正することができる。

ポイントは半自動ながら全自動へと移るきっかけが得られること。工務担当以外にも不足しているパラメータが見えることで、営業担当者のジョブ情報入力の精度を上げる方向に導ける。

AIエンジンと連携することで、膨大な画像データベースから類似画像の検索が可能になる。医学書の人体図や解剖図など、複雑な図版やイラストの制作に1週間以上かかるケースがある。以前、手掛けたものと似通った図版、イラストが要求された時に、その都度、書き起さず、過去データをベースに作り変える方が早い。しかし、いつ、どの印刷物で利用したか思い出せず、オペレータが画像データを長時間にわたり探さざるを得ないことがある。

SCREENのAIエンジンは、ホットフォルダにタネ画像を投げ込むと、該当すると思われる画像の候補がアウトプットされて表示される。タネ画像は手書きでも可能。2秒以内で100万件以上のデータから探し当てる

基本的に図形から判断するが、顧客の目的に合わせて、色や構図を加えたアルゴリズムに変えることもできる。図版やイラストに限らず、CADデータや文書の検索も可能。マニュアルで利用する製品や部品の制作や、デザインの盗用チェックを効率化できるなど用途は広い。

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