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【インタビュー】丸楽紙業
KamiSapiensを中核にIT活用を推進
断裁機とのデータ連携で付帯作業を自動化

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2020.5.21

丸楽紙業株式会社(大阪市中央区)は、勝田製作所の断裁機とJ SPIRITSの紙卸商向けMIS(経営情報システム)『KamiSapiens』を連携させ、断裁業務を効率化した。紙卸商の紙断裁は印刷会社にとっての“プリプレス”といえるが、同社の連携事例は印刷後の断裁でも利用できる要素が多い。印刷後工程のIT活用の好事例として、丸楽紙業代表取締役社長の杉山喜久尚氏に同社の取り組みを伺った。

 

こまかく、ひろくを支えるIT

 

同社は紙卸商に勤めていた杉山社長の祖父が独立して1940年に創業し、関西を地場に成長してきた。創業当初は数社の取引先に売上が集中していたが、リスク回避のために軽オフセット印刷業を中心に中小印刷会社に多品種・小ロットの用紙を届ける“こまかく、ひろく”の方針へと舵を切った。印刷用紙の販売をコア事業に周辺領域に事業を拡げ、軽印刷とバーコ印刷を手掛けるグループ会社を設立し、印刷会社やデザイン会社からの外部受託業務を開始。廃紙の無償回収による印刷工場の5S支援、デジタル印刷機器の販売などにもサービスの幅を広げている。

統計では2008年まで印刷用紙の内需が拡大していた。同社でも時流に乗って単価が高い巻取り紙の扱いが増える傾向にあったが、杉山社長の「印刷は地場産業であり、地域の情報インフラを支えている」という考えのもと、8年前から“こまかく、ひろく”に改めて立ち返る方針を打ち出した。もともと多品種・小ロットの文化が根付いた社風だったため、社員も違和感なく、ベクトルを修正した。

杉山社長は「こまかく、ひろくの実践にはITによる効率化が必須です。もちろんアナログの手法でもできますが、大事なのはローコストでオペレーションすることです。紙を切って即納するサービスはお客様にとって当たり前。IT化とは当たり前をシステム化し、結果として収益に結びつけていくことです」と指摘する。同社の常時在庫は約1,800種類。顧客数は約1,400社。多種多様な商品を多くの顧客に即納できる加工・ロジスティック体制を維持・発展させるために、同社では早くからITを取り入れてきた。

同社が基幹業務システムを導入し、業務のオートメンション化に着したのは今から約30年前。オフコンを導入したのが始まりで、その後も環境の変化に対応しながら機能を拡張していった。オフコンからMISへの切り替えは外部システムとの連携を指向したためだった。

データ連携のイメージ

データ連携のイメージ

杉山社長は「全国紙卸商がサプライチェーン化し、業界全体の在庫の最適化ができないか」という視点で、同業の紙卸商とともに業界のIT化を構想している。将来的には印刷会社のMISと連携し、EDI(データの交換)による受発注の効率化まで見据えている。印刷業向けMIS『PrintSapiens』を開発・販売しているJ SPIRITSの地代所社長にそうした構想を説明したところ賛同と協力が得られ、紙卸商向けMIS『KamiSapiens』の開発につながっていった。

 

段取りミスがゼロに

 

KamiSapiensと連携する勝田製作所の断裁機

KamiSapiensと連携する勝田製作所の断裁機

杉山社長は評価の軸として、定性的な顧客の評価、従業員の評価、定量的な会社の業績を据えている。『KamiSapiens』もその3点を基軸に開発。サービスレベルの維持・向上、従業員の業務負担の軽減、ひいては企業としての数字の向上の実現を目指した。

断裁作業で作業者は指示伝票を見て、判断して、段取りし、断裁する。断裁という作業は必須だが、その周りに付帯する目に見えない作業は本来の業務の妨げになっていることがある。

同社では断裁機に『KamiSapiens』に入力された受注情報を取り込むことによって、断裁データ作成作業や断裁データ入力作業を不要にしている。これにより作業者は断裁作業に集中。連携後は生産性が約4%向上し、作業者の段取りミスによる損金がゼロになった。

現在、同社では6台の断裁機を保有。2020年4月に2台目が『KamiSapiens』と連携した。今後、連携する断裁機を順に増やしていく予定である。また、グループ会社の印刷会社が運用している『Print Sapiens』と『KamiSapiens』のEDI連携にも着手。これによりグループ会社からの受注情報は『KamiSapiens』に自動的に入力される。印刷業界に向けても間もなく発表できる段階にあるという。

杉山社長は「開発意欲がある勝田製作所が大阪の企業で良かったと思います。またKamiSpiensの開発についてもJ SPIRIRSの地代所社長や社員の皆さんに感謝したい」と3社の連携を強調する。

 

受注業務、配送業務なども効率化

 

同社では注文の60%がFAXで送られてくる。電話が30%、メール・その他が10%。電話のうち60%が営業担当者に連絡が入るが、「今後は受注入力用のアプリを開発し、スマートフォンなどを使って社外からでもKamiSapiensに入力できるようにしたい」と見据える。また、FAXの52%がパソコンなどで作成された文書のため、OCRの読み取りも構想している。

現在、『KamiSpiens』は配車システムとも連携。ナビゲーションシステムとAIが配送先などの情報から自動的に配送ルートを生成する。300件程度であれば5分でルートができ、配車担当者が修正してドライバーに手渡している。配車担当者は効率化された時間を使い、ドライバーの業務を手伝う。60~70%が自動化されており、いずれ100%近くまで引き上げる。

同社は2019年9月から電子請求書や電子納品書を導入。取引先の60%がデジタルに切り替わった。顧客からは経理業務が効率化したなどと評価されており、自社の基幹業務システムへの入力業務削減を目的にCSVデータを求められることもある。「紙卸だから紙でなければならないというのは既成概念。続いて入金管理の自動化を予定しています」。

新型コロナウイルス感染症の対策として同社では出勤、在宅勤務、休業のシフトを組んでいる。IT化が支えている部分が大きく、「20日と月末に集中する請求業務は発送作業で残業が当たり前でした。今では作業者が3分の1に減り、残業ゼロです。BCP(事業継続計画)の観点から、感染症対策でシフトが組めたのもIT化を進めていたからです」とIT化の手応えを感じている。